アンペグ

アンペグ：ベースアンプの伝説と歴史

アンペグ社は、ワシントン州ウッディンヴィルに本拠を置く、楽器用アンプメーカーとして知られています。エレクトリックベースアンプを専門としていますが、エレクトリックギターアンプやアップライトベースアンプも製造しています。現在ではヤマハの子会社となっています。

創業と初期の技術

アンペグ社は、ピアニストでありベーシストでもあったエヴェレット・ハルとスタンリー・マイケルによって「マイケル＝ハル・エレクトロニック・ラボ」として設立されました。当初の目的は、ハルが設計したマイクピックアップと、歪みの少ない楽器用アンプの製造でした。真空管アンプは高音量時に歪むのが一般的でしたが、ジャズミュージシャンであったハルはこれを嫌い、歪みを抑えた設計を目指しました。開発されたピックアップはアップライトベースのエンドピンに取り付ける設計で、「アンプリファイド・ペグ (Amplified Peg)」と呼ばれ、これが社名「アンペグ (Ampeg)」の由来となっています。後にハルは会社を独占所有し、社名を「アンペグ・ベースアンプ・カンパニー」に変更しました。

技術革新と代表的な製品

アンペグ社は数々の革新的な製品を生み出し、6つの米国特許を取得しています。1960年代には、真空管を保護するための倒立可能なシャーシを採用したコンボアンプ「ポータフレックス」を発表し、大きな人気を博しました。また、世界初の真空管リバーブ内蔵アンプ「リヴァーブロケット」も開発しています。

アンペグ社の歴史において最も重要な製品と言えるのが、ベースアンプ「SVT (Super Vacuum Tube)」です。1960年代、アンペグ社は低出力のコンボアンプを主に製造していましたが、ロックコンサートの高出力化に対応するため、チーフエンジニアのビル・ヒューズがSVTを開発しました。85ポンドという重量と平均300Wという出力は、当時のアンプを圧倒的に凌駕し、大型会場での使用を可能にしました。ローリング・ストーンズも、ツアーにおいてSVTを使用していたことが知られています。SVTで使用されているスピーカーキャビネットはロジャー・コックスが設計し、10インチスピーカーを4列に配置した巨大なキャビネットは、当時の常識を覆すものでした。SVTは現在でも高い評価を受けており、中古市場でもプレミアム価格で取引されています。

入手性と真空管

フェンダーやマーシャルなどのブランドと比較すると、アンペグアンプの入手性は複雑な問題です。特にギターアンプはベースアンプと比べて安価に入手できるものが多い一方、古いアンペグアンプで使用されている真空管の中には、既に製造中止で入手困難なものがあります。真空管の交換には困難が伴いますが、7027Aや12DW7など、一部の真空管は現在でも再生産されています。しかし、オリジナルのSylvania製7027とは異なるサウンドであるため、代替としてShuguang製6L6GCMSTRを使用するプレイヤーも多いようです。1964年以前のギターアンプは歪みが少なく、人気は低い傾向にあります。

楽器とアクセサリー

アンペグ社はアンプ以外にも、独自の楽器やアクセサリーを製造していました。1962年頃には「ベイビーベース」と呼ばれるエレクトリックアップライトベースを発表、1966年にはロングスケールの「ホリゾンタルベース」を発表しました。これはフレットレスモデルも用意されており、最初の量産型フレットレスエレクトリックベースと言われています。また、1969年にはダン・アームストロングが設計した「シースルー」ギターとベースを発表。ルーサイト製のボディは高いサスティーンを生み出しましたが、重量が大きかったのが特徴です。さらに、1970年代半ばには日本製の「スタッドシリーズ」のギターとベースを製造しました。

アンペグ社はコンパクトエフェクターも製造しており、リバーブ、オーバードライブ、フェイザーなどをラインアップしています。その他、ピック、弦、ストラップなどのアクセサリーも販売していました。

近年の動向と著名なユーザー

アンペグ社は現在もベースアンプを中心に事業を展開しています。2005年にはラウド・テクノロジーズに買収され、2007年には製造拠点をアジアに移転しました。2018年にはヤマハの子会社となりました。アンペグアンプは、ピーター・フック、ジェームス・ジェマーソン、ディー・ディー・ラモーン、レス・クレイプール、クリフ・バートン、キース・リチャーズなど、多くの著名なミュージシャンに愛用されてきました。

アンペグ社の歴史は、真空管アンプ技術の革新、個性的な楽器の製造、そして数々の著名ミュージシャンとの関わりを通じて、音楽史に大きな足跡を残しています。これからもベースアンプの分野で、その地位を確固たるものにしていくことでしょう。

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