アンリ・ド・トリケティ

アンリ・ド・トリケティ：多才な彫刻家の生涯と作品

アンリ・ド・トリケティ（Henri de Triqueti、1803年10月24日 - 1874年5月11日）は、19世紀のフランスを代表する彫刻家の一人です。イタリアのピエモンテにルーツを持ち、フランスの装飾彫刻の発展に大きく貢献しました。彼の作品は、その卓越した技術と洗練された美しさで、今日でも高く評価されています。

生い立ちと初期のキャリア

トリケティは、フランスのロワレ県コンフラン＝シュル＝ロワンで生まれました。父ミシェル・ド・トリケティは、サルデーニャ王国の外交官であり、裕福な男爵でした。幼少期から芸術に触れる機会に恵まれ、画家ルイ・エルサンのもとで絵画を学び始めました。しかし、1820年代後半には彫刻に転向し、その才能をすぐに開花させました。

フランス装飾彫刻の革新

トリケティは、フェリシー・ド・フォーヴォー、アントナン・モワンヌ、ジャン＝ジャック・フシェル、ジェアン・デュ・セニョールといった同時代の彫刻家たちと共に、フランスの装飾彫刻の革新を牽引しました。彼らは伝統的な彫刻技法を尊重しつつも、新しい表現方法や素材の活用を積極的に試み、彫刻界に新たな息吹を吹き込みました。

主要な作品

1831年からはパリのサロンに作品を出展し、その名声を確立しました。代表作としては、パリのマドレーヌ教会のブロンズ扉のレリーフや、ノートルダム・ド・コンパッシオン教会のオルレアン公フェルディナン・フィリップの慰霊碑などが挙げられます。これらの作品は、トリケティの卓越した技術と芸術的感性を物語っています。

また、1864年から10年間は、イギリスのウィンザー城にあるプリンス・アルバート礼拝堂の壁面装飾を手がけました。この仕事は、トリケティの国際的な評価をさらに高めることとなりました。彼の作品は、フランス国内だけでなく、イギリスでも広く知られるようになったのです。

私生活

トリケティは、イギリスの彫刻家トーマス・バンクスの孫娘と結婚し、娘をもうけました。しかし、彼はイギリス生まれの弟子である彫刻家スーザン・デュラントとも愛人関係になり、1869年にはデュラントとの間に後の外交官ポール・ハーヴェイが生まれています。

死と遺産

トリケティはパリで亡くなりました。彼の作品は、今日でも美術館や教会などで鑑賞することができ、その芸術的遺産は後世に受け継がれています。

作品リスト(一部)

マドレーヌ教会のブロンズ扉のレリーフ
ノートルダム・ド・コンパッシオン教会のオルレアン公フェルディナン・フィリップの慰霊碑
ウィンザー城プリンス・アルバート礼拝堂の壁面装飾

参考文献

Stanislas Lami, Dictionnaire des sculpteurs de l'école française au dix-neuvième siècle, tome quatrième, Paris, 1921, pp. 318-324.
Luc Benoist, La Sculpture romantique, Paris, 1928.
Collectif, Henry de Triqueti (1803-1874), Le sculpteur des princes, Paris, Hazan, 2007.
Voyages pittoresques : Normandie 1820-1909, Milan, Silvana editoriale, 2009, p. 259-261.
Collectif, 1848-1849 une saison aux Pyrénées, dessins de voyage d'Henry de Triqueti, Pau, Éditions du Pin à Crochets, 2010.
Frits Lugt, « Les marques de collections de dessins et d'estampes : Amsterdam, 1921 », Supplément, La Haye, no L.1304, 1956
Jules Moiroux, Le cimetière du Père Lachaise, Paris, S. Mercadier, 1908.
Elizabeth Darby, « A French Sculptor in Wiltshire: Henri de Triqueti's Panel in the Church of St Michael & All Angels, Teffont Evias », The Wiltshire Archaeological and Natural History Magazine, Vol.95, 2002.
Sylvain Cordier, « L'aiguière des mères israélites par Henry de Triqueti », Revue M du Musée des beaux-arts de Montréal, été 2019, p. 16.
Richard Dagorne, postface par Alicia Robinson, « Henry de Triqueti’s Vase of dreams », The Burlington Magazine, no 1400, vol CLXI, novembre 2019, pp. 924-933.
Richard Dagorne, « Berlin's monuments and museums under the expert eye of sculptor Henry de Triqueti », Jahrbuch der Berliner Museen, Ehemals Jahrbuch der Preussischen Kunstsammlungen, Neue Folge, Band 59, 2017, 2019, Berlin, Gebr, Mann Verlag, pp. 61-79.

トリケティの生涯と作品は、19世紀の彫刻界における重要な一面を映し出しています。彼の芸術に対する情熱と革新的な精神は、今後も多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

もう一度検索