アンリ・ラボー

アンリ・ラボー（1873年11月10日 - 1949年9月11日）は、フランスの作曲家、音楽教育者です。音楽一家に生まれ、パリ音楽院でアンドレ・ジェダルジュに楽理を、ジュール・マスネに作曲を師事しました。1920年にはフォーレの後任としてパリ音楽院の院長に就任しています。

ラボーは、サン＝サーンスの影響を受けた保守的な作曲家として知られ、「モダニズムは敵なり」という言葉をモットーとしていました。しかし、創造的な音楽家としての側面もあり、フォーレのピアノ組曲《ドリー》を管弦楽用に編曲したことは、彼の代表的な仕事の一つです。また、ワーグナーやリストの和声法を取り入れた《ウェルギリウスの詩による「牧歌」》や《「ファウスト」による夜の行列》といった交響詩は、その美しさから再評価の価値があると言えるでしょう。

さらに、16世紀イングランドのヴァージナル楽派の作品を基にした《管弦楽のためのイングランド組曲》や、《ロシア民謡によるディヴェルティメント》など、古い時代や異国の主題を用いた編曲や変奏曲も手がけています。オペラ《マルーフ、カイロの靴屋》は、当時のオリエンタリズムブームに乗って一時的な成功を収めましたが、同時代のストラヴィンスキーの《火の鳥》やデュカスの《ラ・ペリ》といった先進的な作品と比べると、発想が安易で表現も表面的であるという評価もあります。

ラボーは、指揮者としてもパリ・オペラ座やボストン交響楽団で活躍しました。また、アイルランドの詩人ジョン・ミリントン・シングの戯曲『海に騎りゆく人々』や、1925年の映画「棋士」には付随音楽を提供しています。

アンリ・ラボーは、保守的な作風ながらも、その音楽的才能は高く評価されており、特に管弦楽編曲の分野で重要な足跡を残しました。彼の作品は、古典的な形式美とロマン的な情緒を併せ持ち、独特の魅力を放っています。

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