アンリ・ルソー

アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソー：素朴派の巨匠

アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソー（1844年5月21日 - 1910年9月2日）は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの画家であり、素朴派の代表的な存在です。彼はパリ市の税関の職員として22年間働き、主に副業として絵を描いていました。そのため、当時は「ドゥアニエ（税関吏）・ルソー」などと呼ばれ、いわゆる「日曜画家」として知られていました。

ルソーの絵画は生前、多くの批評家からは下手な作品と評されましたが、色彩豊かで独自の表現力を持っていました。特に、彼の作品は19世紀末から20世紀初頭におけるシュルレアリスムの先駆けとも言われ、独自の幻想的な世界観を描いています。ルソーは、自身が軍役を経て法律事務所で働いた後、1871年にはパリの入市税関の職員となります。

最初のアート作品は1879年（35歳）の頃であり、彼は1886年から審査のないアンデパンダン展に出品し、以降それを継続しました。多くの困難に見舞われた家庭生活（最初の妻は1888年に死去し、2番目の妻も1903年に亡くなってしまいます）を背負いながらも、彼は絵画に情熱を注ぎ続けました。1893年に退職後は、絵画に専念する生活を送りました。

彼の代表作には、『戦争』（1894年）、『眠るジプシー女』（1897年）、『蛇使いの女』（1907年）などがあり、その多くが税関を退職した後に生み出されました。これらの作品の多くは、熱帯のジャングルをテーマにしており、彼自身はメキシコ従軍の経験をもとにしていると語っていましたが、実際には南国を訪れたことはありませんでした。代わりに、彼はパリの植物園で観察した植物をもとに、幻想的で色鮮やかな風景を創り上げたのです。

ルソーの作品は、彼の死後に再評価され、特にピカソやアポリネールをはじめとする当時の様々な芸術家たちによって称賛されるようになりました。彼の特徴的な画風や主題は、多くの後続の画家たちに影響を与え、その後のアートシーンにおいて重要な役割を果たしました。日本でも早くから彼の作風が紹介され、田中一村や加山又造といった画家たちに影響を及ぼしました。

晩年には、手形詐欺事件に巻き込まれ、一時拘留されるなど、波乱の人生を送ったルソーですが、1910年に肺炎により66歳でこの世を去りました。その死後も、彼の作品は独自のスタイルと表現で多くの人々に愛されています。

代表作品

• - 《私自身：肖像＝風景》（1890年）
• - 《戦争》（1894年）
• - 《眠るジプシー女》（1897年）
• - 《蛇使いの女》（1907年）
• - 《ジュニエ爺さんの二輪馬車》（1908年）

ルソーの作品は、人物が真正面か横向きで描かれ、風景は遠近感が欠如している点が特徴です。また、彼の絵は、オリジナルな発想と技巧を駆使し、今もなお多くのアートファンに愛され続けています。

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