アンリ1世 (キプロス王)

アンリ1世は、13世紀にキプロス王国を統治したリュジニャン朝の第4代キプロス王です。1217年5月3日に生まれ、1253年1月18日に亡くなりました。その生涯は、王位をめぐる複雑な政治状況と、自身の統治能力の発揮、そして結婚を通じた王国の安定化への努力によって彩られています。

生い立ちと即位
アンリ1世は、父であるキプロス王ユーグ1世と、母アリックス・ド・シャンパーニュの間に生まれました。1218年、父王ユーグ1世が亡くなると、生後わずか8ヶ月でキプロス王に即位しました。幼すぎるアンリ1世を補佐するため、母アリックスが摂政に就任しましたが、実際の政務はアリックスの叔父であるフィリップ・ディブランに一任されました。フィリップの死後は、その弟であるベイルート卿ジャン・ディブランが摂政の役目を引き継ぎました。

幼少期の戴冠と権力闘争
1225年、アンリ1世は8歳という若さでニコシアの聖ソフィア大聖堂においてキプロス王としての戴冠式を行いました。この異例の早さでの戴冠は、摂政フィリップの作戦によるものでした。当時、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世が、幼いアンリ1世を利用してキプロス王国の権力を握ろうと画策していたため、これに対抗するために戴冠式を急いだのです。1228年には、フリードリヒ2世がジャン・ディブランを摂政の地位から引きずり下ろし、キプロス王国の実権を掌握しました。しかし、フリードリヒ2世が聖地へ旅立った隙をついて、ジャンは再び政治を掌握し、フリードリヒ2世に対抗しようと試みました。この出来事は、キプロス王家と神聖ローマ皇帝との間でランゴバルド戦争を引き起こすきっかけとなりました。

親政とエルサレム王国の摂政
1232年、アンリ1世は15歳となり、自ら政治を行うことができる年齢に達しました。成人したアンリ1世は、イブラン家との結びつきを強め、王国の安定に努めました。また、アンリ1世はエルサレム王国を治めるコンラート4世を支援し、1246年から1253年にかけてエルサレム王国の摂政として同国を統治しました。

結婚と子孫
アンリ1世は生涯で3度の結婚をしました。最初の結婚は1229年、モンフェッラート侯グリエルモ6世の娘アリックス・ド・モンフェラートとでしたが、子供は生まれませんでした。二度目の結婚は、キリキア・アルメニア王国の摂政コンスタンティン・ド・ランプロンの娘ステファニー・ド・ランプロンとでしたが、この結婚でも子供は生まれませんでした。三度目の結婚は1250年、アンティオキア公ボエモン5世の娘プレザンス・ダンティオケとの間で、この結婚によって一男ユーグが生まれました。

死と遺産
アンリ1世は1253年に亡くなり、キプロス王位は唯一の息子ユーグに継承されました。アンリ1世は、ニコシアにあったテンプル騎士団の教会に埋葬されました。アンリ1世の生涯は、幼くして王位を継承し、激動の時代を生き抜いた君主の物語です。彼の治世は、王国を内外の脅威から守り、次世代へと繋ぐ重要な時期となりました。

結婚の詳細
1229年：アリックス・ド・モンフェラートと結婚（子供なし）
1237/8年：ステファニー・ド・ランプロンと結婚（子供なし）
1250年：プレザンス・ダンティオケと結婚（1男ユーグをもうける）

子供
ユーグ2世（1252/3年 - 1267年） - キプロス王

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