アンリ2世・ド・サヴォワ＝ヌムール

アンリ2世・ド・サヴォワ＝ヌムール（1625年11月7日 - 1659年1月14日）は、フランスの貴族であり、ランス大司教を務めた人物です。その後、兄の急逝により、ジュネーヴ公、ヌムール公、オマール公といった複数の公位を継承することになります。

生涯

アンリ2世は、ヌムール公アンリ1世とオマール女公アンヌ・ド・ロレーヌの末息子としてパリで生まれました。当初は聖職者の道に進み、学問においても優れた成果を上げていました。1651年にはランス大司教に任命され、将来を嘱望されていました。

しかし、運命は彼を別の道へと導きます。1652年、兄シャルル・アメデが決闘で命を落としたため、アンリ2世はサヴォワ＝ヌムール家の当主となるべく聖職者の道を断念せざるを得なくなりました。彼は、自ら「美徳によって尊重されたであろう状態」と語る聖職者の地位を捨て、世俗の道を歩むことになりました。

1657年5月22日、アンリ2世はマリー・ドルレアン＝ロングヴィルと結婚しました。マリーは「ロングヴィル嬢」として知られ、ロングヴィル公アンリ2世とルイーズ・ド・ブルボン＝ソワソンの娘でした。この結婚は、当時多くの人々を驚かせました。フランスで最も裕福な女子相続人であるマリーが、なぜ若い修道士と結婚したのか理解できなかったからです。アンリ2世は学者肌で、病弱であり、財産も権力もなく、人望も厚いとは言えませんでした。マリー自身も結婚を後悔したようですが、時すでに遅しでした。アンリ2世は聖職者を辞める際に発熱し、それが原因で健康を損ねていました。

アンリ2世は結婚からわずか2年後の1659年1月14日に死去しました。遺体はアヌシーの一族の墓所に埋葬されましたが、心臓は彼の希望通りパリのサン＝ポール＝サン＝ルイ教会に安置されました。アンリ2世の死によって、フランスにおけるサヴォワ＝ヌムール家は断絶しました。

ヌムール公領は王領に戻され、後にルイ14世によって弟のオルレアン公フィリップ1世に与えられました。一方、ジュネーヴ伯領とオマール伯領は、アンリ2世の姪にあたるマリー・ジャンヌ・ド・サヴォワ＝ヌムールが相続しました。寡婦となったマリーはその後、1694年にエストゥトヴィル女公、ヌーシャテル女公、ドンブ女公となりました。

アンリ2世は、聖職者から公爵へと転身するという劇的な人生を歩みましたが、その短い生涯は多くの謎と複雑な人間関係に彩られています。彼の突然の死は、フランスの貴族社会に大きな影響を与え、その遺産は後の歴史の中で様々な形で受け継がれていくことになりました。

参考資料

Louis Charles Dezobry et Théodore Bachelet, Dictionnaire de Biographie et d’Histoire, Paris, 1863.
« Nemours (Henri II de Savoie, duc de) », in Louis-Gabriel Michaud, Biographie universelle ancienne et moderne : histoire par ordre alphabétique de la vie publique et privée de tous les hommes avec la collaboration de plus de 300 savants et littérateurs français ou étrangers, 2e édition, 1843-1865.
* Louis Moreri, Le Grand Dictionnaire historique ou le mélange curieux de l'histoire sacrée et profane, t. IX, Paris, Les Libraires associés, 1759, 448-664 p.

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