アヴェルヌス湖

アヴェルヌス湖について

アヴェルヌス湖（イタリア語: Lago d'Averno）は、南イタリアのカンパニア地方に位置し、ポッツォリの北西約4キロメートルのところにある火口湖です。この湖はフレグレイ平野の近くにあり、カンパニア火山弧に属しています。その形はほぼ円形で、周囲は約2キロメートル、水深は約60メートルです。

古代ローマにおける重要性

古代ローマ人にとって、アヴェルヌス湖は冥府の入り口とされ、非常に重要な場所と見なされていました。彼らは、湖の上空を飛ぶ鳥が有毒なガスに遭遇し墜落してしまうという迷信を信じていました。このため、湖の名前はギリシャ語の「aornos」に由来し、「鳥がいない」という意味が込められています。多くのローマの著述家たちは、アヴェルヌスを地底世界の象徴として使用しており、ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』では、主人公アイネイアースが湖南近くの洞窟を通じて地底に降りるという描写があります。

現在の湖の状況

今日では、湖に関連する危険性は薄れているものの、火山活動によって有毒なガスが発生する可能性がゼロではありません。古代の信仰が事実に基づいていたのかどうかは不明ですが、1986年にカメルーンで起こったニオス湖の火山ガス災害の事例に鑑みると、活火山の湖は注意が必要な場所であることは明らかです。

ローマ時代の生活

アヴェルヌス湖は危険とされながらも、ローマ人たちはこの地域に居を構え、村々は葡萄の栽培で栄えました。湖近くには、化身「デウス・アヴェルヌス」が祀られる神殿や、東岸に建設された大規模な浴場があります。紀元前37年には、将軍マルクス・ウィプサニウス・アグリッパによってこの湖が海軍基地へと改修され、ユリウス・カエサルにちなんで「イリウス港」と名付けられました。

水路と交通

湖周辺では運河が掘られ、湖を通じて海に出られるようになりました。また、「コッシオの洞窟」として知られる地下通路が設けられ、ギリシャの植民地クーマエとの往来が可能になりました。この通路は全長1キロメートルの大規模なトンネルであり、1940年代まで使用できる状態で残っていました。

アヴェルヌス湖は、その神秘的な風景と深い歴史から、現在でも多くの人々を惹きつける魅力的な場所です。古代ローマの信仰や文化、そして歴史的な構造物の数々は、訪れる者に多くの物語を語りかけます。

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