ア・ハード・デイズ・ナイト (曲)

ア・ハード・デイズ・ナイト：ビートルズ不朽の名曲の軌跡

ビートルズの楽曲「ア・ハード・デイズ・ナイト (A Hard Day's Night)」は、1964年7月にシングルとしてリリースされ、瞬く間に世界的な人気を博した名曲です。日本では当初「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」という邦題で知られていました。レノン＝マッカートニー名義ながら、主にジョン・レノンによって書かれたこの曲は、同名の映画の主題歌であり、アルバム『ハード・デイズ・ナイト』のオープニングナンバーも務めています。イギリスとアメリカのシングルチャートで共に1位を獲得するなど、その人気は圧倒的でした。

タイトルの由来：リンゴ・スターの何気ない言葉

ユニークなタイトル「ア・ハード・デイズ・ナイト」の誕生秘話には、リンゴ・スターが関わっています。多忙な一日を終えた彼から漏れた「It was a hard day's night」という言葉が、映画、そして楽曲のタイトルへと繋がったのです。ジョン・レノンは、このタイトルを気に入り、翌朝には楽曲を完成させたと語っています。一方、ポール・マッカートニーは、映画のタイトル選定の際に、リンゴの独特な表現がバンドメンバーの共感を呼び、採用されたと別の視点から説明しています。

音楽的構成：洗練されたアレンジと印象的なオープニング

楽曲は、ジョージ・ハリスンがリッケンバッカー・360/12|リッケンバッカー・360_12で奏でる印象的なオープニング・コードから始まります。プロデューサーのジョージ・マーティンは、映画とサウンドトラックの両方のオープニングにふさわしい、インパクトのある始まりを意図したと語っています。このオープニング・コードについては、G7add9sus4、G7sus4、G11sus4など、様々な解釈がありますが、レノンのアコースティック・ギターとハリスンのリッケンバッカーによる演奏であるという結論が有力です。ハリスン本人は後に、Fadd9のコードであったと明かしています。

楽曲はGメジャーの4分の4拍子で、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」や「ユー・キャント・ドゥ・ザット」と似た構成を持ち、2つのブリッジが挟まれた間奏が特徴的です。レノンがヴァースでリードボーカルを務め、ブリッジパートはレノンの声域が高すぎたためマッカートニーが歌っています。アウトロでは、ハリスンがオープニングコードをアルペジオで奏で、映画の次のシーンへと繋がるような効果を生み出しています。これは、マーティンが楽曲に求めた、映画とのシンクロニシティを反映したものです。

レコーディング：24時間以内の集中作業

1964年4月16日、EMIレコーディング・スタジオで、わずか24時間以内に作曲、リハーサル、レコーディングを終えたという驚異的なスピードで本作は制作されました。複数のトラックにレノンのボーカル、マッカートニーのバックボーカル、楽器の音などが重ねられ、テイク9が最終的に採用されました。ハリスンのギターソロはテープを半速で再生して録音するなど、高度な技術も駆使されています。シングル盤とアルバム盤では、フェードアウトのタイミングに違いがあります。

リリースと評価：世界的な成功と絶賛

1964年6月26日、アメリカでアルバム『A Hard Day's Night』に収録され、その後シングルとしてもリリースされました。イギリスでは7月10日、B面には「今日の誓い」が収録されました。シングル盤はイギリス、アメリカのチャートで1位を獲得し、その後も多くのコンピレーション・アルバムに収録され続けています。BBC放送の音源やライブ音源も収録されたアルバムが発売されており、その人気は時代を超えて衰えることを知りません。また、『ローリング・ストーン』誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500」や「100 Greatest Guitar Songs Of All Time」など、数々のランキングで高い評価を受けています。

メンバーの貢献とチャート成績

・ジョン・レノン：リードボーカル、エレクトリック＆アコースティックギター
・ポール・マッカートニー：バックボーカル、ベース
・ジョージ・ハリスン：12弦ギター
・リンゴ・スター：ドラム、ボンゴ、カウベル

チャート成績は既に述べたとおり、イギリスとアメリカの両方で1位を獲得するなど、大きな成功を収めました。

ライブ演奏とカバーバージョン

ビートルズは1965年のライブまでこの曲を演奏していました。ポール・マッカートニーは2016年、51年ぶりにこの曲をライブで演奏しました。その後も、テレビ番組などで演奏するなど、現在も愛され続けています。多くのアーティストがカバーしており、ピーター・セラーズのカバーバージョンはイギリスのチャートで14位にランクインするなど、高い評価を得ています。日本では弘田三枝子、ちわきまゆみ、つんく♂などがカバーしています。

「ア・ハード・デイズ・ナイト」は、ビートルズの音楽史における重要な一曲であり、その影響力は現代においても色褪せていません。リンゴ・スターの何気ない言葉から生まれたこの曲は、音楽的にも、文化的にも、大きな足跡を残したと言えるでしょう。

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