ユー・キャント・ドゥ・ザット

ユー・キャント・ドゥ・ザット：ビートルズのB面曲から生まれた名曲

1964年、ビートルズのシングル『キャント・バイ・ミー・ラヴ』のB面に収録され、後にアルバム『ハード・デイズ・ナイト』にも収録された「ユー・キャント・ドゥ・ザット」。ジョン・レノンが中心となって制作されたこの曲は、レノン＝マッカートニー名義ながら、レノンの強い個性が光る、魅力的なロックナンバーです。

所有欲と嫉妬心をテーマにした楽曲

この曲は、所有欲の強さと嫉妬心を鮮やかに表現しています。音楽評論家フィリップ・マーゴティンとジーン・ミシェル・ゲドンは、この曲をレノンの代表曲『ジェラス・ガイ』の原型と位置付けています。レノン自身も、1980年の『プレイボーイ』誌のインタビューで、ウィルソン・ピケットの影響を受けながら、独特のカウベルの使い方が特徴だと語っています。

個性光るレノンの演奏

「ユー・キャント・ドゥ・ザット」では、レノンがギターソロも担当。レノンは、この曲について「リズムを刻むときに何か面白いことをしてやろうと試みて、だいたい良い感じにできていた」と語っており、単なる伴奏ギターではなく、曲全体を盛り上げるための個性的なリズムギターを演奏しています。また、ジョージ・ハリスンは、この曲のイントロとアウトロのギターリフを作曲。ハリスン自身は、「スタジオにいて、『何かしなくちゃ』と思って書いた」と振り返っています。

映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』での演奏シーン

ビートルズ主演の映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』の撮影では、「ユー・キャント・ドゥ・ザット」の演奏シーンも撮影されましたが、最終的にカットされてしまいました。このシーンが公開されていれば、楽曲の魅力を更に多くの人に知らしめる機会になったかもしれません。

レコーディングとリリース

レコーディングは1964年2月25日、EMIレコーディング・スタジオで行われました。同日には「アンド・アイ・ラヴ・ハー」や「恋する二人」などもレコーディングされており、ビートルズにとって非常に重要な日だったと言えるでしょう。1995年発売の『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』には、ガイドボーカルを含む初期テイクが収録されています。

ハリスンが所有する1964年製のRickenbacker 360/12が、この曲のレコーディングで使用されました。このギターは、『エド・サリヴァン・ショー』出演のためアメリカに滞在していた際にハリスンに贈られたものです。

シングル『キャント・バイ・ミー・ラヴ』のB面として1964年3月に発売された後、『ハード・デイズ・ナイト』、『ザ・ビートルズ・セカンド・アルバム』、『ロックン・ロール・ミュージック』など、多くのアルバムに収録されました。また、BBCラジオでの演奏音源も残っており、2013年発売の『オン・エア〜ライヴ・アット・ザ・BBC Vol.2』、2016年発売の『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』に収録されています。アルバム収録バージョンとして計画された、ジョージ・マーティンによるピアノオーバーダブバージョンは、最終的には採用されませんでした。

多彩なアーティストによるカバー

「ユー・キャント・ドゥ・ザット」は、多くのアーティストにカバーされています。中でも有名なのは、ハリー・ニルソンによる1967年のカバー。ニルソンのバージョンは、複数のビートルズ楽曲を融合させた「初のマッシュアップ曲」と言われています。カナダの『RPM』チャートで10位、アメリカの『ビルボード』誌Bubbling Under the Hot 100で122位を記録しました。

他にも、スプリームス、ヴァニラ・ファッジ、NOBODY、スミザリーンズなど、多くのアーティストがカバーしており、その人気と影響力の高さを示しています。

まとめ

「ユー・キャント・ドゥ・ザット」は、ビートルズの隠れた名曲と言えるでしょう。レノンの個性あふれる楽曲、そして多くのアーティストにカバーされた歴史は、この曲の持つ普遍的な魅力を示しています。B面曲という枠にとらわれず、多くのリスナーに愛され続ける名曲として、これからも語り継がれていくことでしょう。

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