アーカンソー (装甲艦)

CSSアーカンソー：南北戦争を駆け抜けた装甲艦

CSSアーカンソーは、アメリカ連合国海軍（南軍）が南北戦争中に建造した装甲艦です。その艦名は、アーカンソー州に由来します。本艦は、西部戦線において、その短い活動期間ながらも、数々の重要な戦いに参加しました。

建造と初期の活動

1861年10月、アーカンソーはテネシー州メンフィスで、J.T.シャーレイ社によって建造が開始されました。しかし、メンフィスが北軍の脅威にさらされると、1862年4月に未完成のまま、ヤズー川を下ってミシシッピ州グリーンウッドへ移動することになりました。姉妹艦であるCSSテネシーが焼却処分されたのと対照的に、アーカンソーは完成を目指すことになりました。

連合国海軍省は、アイザック・ブラウン大佐に、グリーンウッドでのアーカンソーの完成と就役、そして指揮を命じました。しかし、ブラウンが到着した時点では、船体は完成していたものの、装甲は未装着、エンジンも未組み立て、大砲は砲架にすら載っていないという状況でした。装甲に使う予定の鉄道レールは川底に沈んでしまっていたため、急遽回収作業が行われました。ブラウンは、アーカンソーをヤズー・シティへ曳航し、地元の職人と陸軍兵士の協力を得て、工事を続けました。真夏の炎天下での5週間にわたる作業の結果、艦尾と操舵室を防御するための湾曲装甲を除く部分が完成しました。

ビックスバーグでの戦い

一方、北軍はデヴィッド・ファラガット提督率いる艦隊をメキシコ湾から派遣し、ビックスバーグを攻撃していました。また、チャールズ・デイビス提督率いる陸軍所属の砲艦や衝角艦も攻撃に加わっていました。南軍司令官アール・ヴァン・ドーン将軍は、ブラウンにアーカンソーをビックスバーグへ向かわせるよう命令しました。ブラウンは急遽、ミシシッピ川の船舶から船員を集め、さらに陸軍兵士を乗艦させ、1862年7月14日に北軍艦隊に向けて出撃しました。

出撃後、ボイラーの蒸気漏れと火薬庫の火薬が濡れて使用不能になっていることが発覚し、ブラウンらはヤズー川沿いで火薬を乾燥させる必要に迫られました。なんとか火薬を乾燥させた後、アーカンソーは再び出撃しました。7月15日の夜明け直後、アーカンソーは、装甲艦キャロンデレット、木造砲艦タイラー、衝角艦クイーン・オブ・ジ・ウェストの3隻の北軍艦艇と遭遇しました。アーカンソーは激しい戦闘の中、キャロンデレットを戦闘不能に追い込み、タイラーとクイーン・オブ・ジ・ウェストの追撃をかわし、北軍艦隊を突破することに成功しました。アーカンソーのビックスバーグへの到着は市民から熱狂的に迎えられました。

その日の夕方、ファラガット提督の艦隊はビックスバーグの砲台を通過してアーカンソーを破壊しようと試みましたが、1発しか命中せず、2人が死亡、3人が負傷したものの、アーカンソーの撃沈には至りませんでした。

ビックスバーグ断崖の下での攻防

修理後、アーカンソーは再び北軍の脅威となりました。北軍はアーカンソーを破壊しようと攻撃を仕掛けましたが、アーカンソーは沿岸砲台の援護を受け、これを退けました。7月22日には、エセックス、クイーン・オブ・ジ・ウェスト、サムターの3隻が協調の取れていない攻撃を仕掛けましたが、アーカンソーはこれらの攻撃をしのぎました。この一連の戦闘で、アーカンソーも損害を受けましたが、北軍はビックスバーグからの撤退を余儀なくされました。ファラガット提督は海軍省に撤退許可を求め、7月24日にビックスバーグを離れました。

バトン・ルージュでの最後の戦い

北軍艦隊が撤退すると、ブラウンはグレナダへの一時帰還を申請しました。しかし、ヴァン・ドーン将軍はこれを無視し、アーカンソーを下流のルイジアナ州バトンルージュへ派遣し、陸軍の攻撃を支援するよう命令しました。ブラウンの命令に反して、スティーブンス大尉はヴァン・ドーンの命令に従い出撃しましたが、案の定、アーカンソーのエンジンは何度も故障しました。8月6日、バトンルージュで北軍艦隊との戦闘に臨んだ際、両エンジンのクランクピンが同時に壊れ、アーカンソーは動けなくなってしまいました。

スティーブンス大尉は、乗員に退艦を命じ、エンジンを破壊し、艦に火を放ちました。アーカンソーは燃えながら川を下り、正午頃に爆沈しました。その短い生涯に幕を閉じました。

現在

アーカンソーの残骸は、Free Negro Pointの鉄道・自動車併用橋の南方、ミシシッピ川の河床に横たわっています。その場所は、河口から233マイルと690フィートの地点です。

CSSアーカンソーは、その短い生涯の中で、勇敢な戦いぶりを見せました。しかし、最後は自沈という悲劇的な結末を迎えました。その存在は、南北戦争における南軍の奮闘と、装甲艦の重要性を示すものとして、今もなお語り継がれています。

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