アーガス (空母)

HMSアーガス：世界初の事実上実用的な航空母艦

概要

HMSアーガス (I49) は、イギリス海軍が運用した航空母艦です。元々はイタリア王国が発注した客船「コンテ・ロッソ」として建造が始まりましたが、建造途中にイギリス海軍に買い上げられ、航空母艦へと改造されました。1918年9月16日に竣工し、第一次世界大戦終結直後の時期に就役しました。

アーガスは、飛行甲板上に構造物を一切持たない、全通飛行甲板を備えた最初の艦として、世界的な空母設計の先駆けとなりました。アメリカ海軍の「ラングレー」や日本海軍の「鳳翔」といった、他国の空母開発にも多大な影響を与えたと言えるでしょう。

設計と構造

元々は客船だった船体を改造したアーガスは、船首から船尾まで続く全長143mの飛行甲板を備えていました。艦橋は飛行甲板下に配置され、飛行甲板を完全にフラットにすることで、航空機の離着艦をスムーズに行う設計とされていました。狭い水路を通航する際には、水圧式の小型操舵艦橋が飛行甲板上にせり上がってくる機構も備えられていました。

格納庫は飛行甲板の下に位置し、20機の艦載機を搭載可能でした。前後のエレベーターで格納庫と飛行甲板間を航空機は移動しました。初期の着艦装置は制動能力が不足しており、航空機の損傷事故が多発しました。改良を経て、1931年に実用的な着艦装置が導入されることになります。1936年から1938年の改装では艦首を覆い、飛行甲板を拡張して全長167mに伸ばしました。しかし、煙突が撤去されたため、独特の外観となりました。

兵装

アーガスは、主武装として10.2cm単装砲6基を備えていました。これは、当時の航空母艦が軽巡洋艦的な任務も兼ねることが想定されていたためであり、同時代の他の航空母艦にも見られる特徴です。

搭載機と運用

アーガスは、就役当初はソッピース・クックーなど複葉機を運用していました。時代とともに艦載機は発展し、アーガスも様々な機種を運用することになります。第二次世界大戦中も、マルタ島への航空機輸送や船団護衛など、重要な任務を担いました。

艦歴

アーガスは第一次世界大戦終結後、大西洋艦隊に配属されました。チャナク危機では戦闘機を発艦させ、その能力を証明しました。第二次世界大戦では、地中海や大西洋で活動し、数々の作戦に参加しました。1940年にはドイツ海軍の重巡洋艦と遭遇するなど、数々の戦闘や危険な任務を経験しています。戦後、練習空母として使用された後、1946年に除籍、解体されました。

アーガスの遺産

アーガスは、世界初の事実上実用的な航空母艦として、空母設計の進化に大きな足跡を残しました。その革新的な設計と、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけての活躍は、海軍史において重要な位置を占めています。全通飛行甲板という概念は、後の空母設計に大きな影響を与え、現代の空母へと繋がっていく礎となりました。アーガスの設計思想や運用方法は、後続の航空母艦の設計や運用に大きな影響を与え、現代空母の原型とも言える存在です。その歴史的意義は、今日でも高く評価されています。

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