アーキビスト

アーキビスト：歴史と未来をつなぐ情報管理のプロフェッショナル

アーキビストは、永久保存に値する情報を収集、整理、保存、管理し、研究者や一般の人々が容易にアクセスできるようにする専門職です。写真、ビデオ、手紙、書類、電子データなど、多様な形式の記録を対象とし、それらの情報を未来へと繋ぐ重要な役割を担っています。

アリゾナ州立図書館デジタル行政資料部長のリチャード・ピアスモーゼスの言葉にあるように、アーキビストは「確実な過去の記憶として永続的な価値を持つ記録」を保存し、人々がその記録の中から必要な情報を見つけ、理解する手助けをする存在です。

アーキビストの仕事内容

アーキビストの仕事は多岐に渡ります。具体的には、以下の様な業務が挙げられます。

コレクションの収集と評価: 新たな資料の取得、その価値の評価
資料の整理と記述: 資料の分類、整理、目録作成、説明資料の作成
利用者へのサービス: 資料の検索支援、問い合わせ対応
資料の保存処理: 資料の劣化防止、保存環境の管理

資料を整理する際には、資料の出所、権利関係、元の順番といった重要なルールを遵守し、倫理的な配慮も必要です。また、資料の翻訳や解説を行うことで、利用者の理解を助ける役割も担っています。

アーキビストは、政府機関、地方自治体、博物館、大学、企業など、様々な場所で活躍しています。個人のコレクション管理を行う場合もあります。

多くのアーキビストは教育者としての側面も持ち合わせています。大学で講義を行うほか、一般向けに資料に関する教育プログラムを企画・実施したり、コレクションの展示やプロモーション活動を行うこともあります。

特に近年は、デジタル化の進展により、情報処理スキルが不可欠となっています。多くのアーキビストはXMLなどの知識を有し、オンラインでの資料提供も行っています。

アーキビストに必要なスキル

アーキビストには幅広いスキルが求められます。

対人スキル: 利用者支援のためのコミュニケーション能力
保存処理技術: 資料の劣化を防ぐための技術
情報技術: デジタルデータの管理、保存技術
論理的思考力: 大量の資料の分類・整理
* 調査研究能力: 資料の調査、分析能力

アーキビストに必要な教育・資格

多くのアーキビストは、大学院でアーカイブ学の修士号を取得しています。アーカイブ学に加え、図書館学、歴史学、法学、コンピュータサイエンスなど、関連分野の知識も求められるため、複数分野の学位取得者も多いです。

国によっては、アーキビストの資格制度が整備されており、専門組織が認定試験を実施しています。日本では、国立公文書館による「認証アーキビスト」、日本アーカイブズ学会による「登録アーキビスト」など、いくつかの民間資格があります。

アーキビストの歴史

アーキビスト分野のパイオニアには、イギリスのヒラリー・ジェンキンソン、アメリカのT.R.シェレンバーグ、アーンスト・ポズナー、マーガレット・クロス・ノートンらが挙げられます。彼らの著作は、アーカイブ学の理論と実践に多大な影響を与えました。

日本におけるアーキビスト

日本におけるアーキビストの現状は、欧米諸国と比べて遅れています。体系的な教育制度が不足しており、経験に基づくOJTが中心となっています。

近年、日本アーカイブズ学会の設立や大学院におけるアーカイブズ学専攻の設置など、状況は改善されつつありますが、依然としてアーキビストの認知度や専門性の向上は大きな課題です。

特に、公文書管理の重要性に関する認識の低さが問題となっています。行政の透明性や国民の知る権利といった観点からも、公文書の適切な保存と公開は不可欠です。

また、デジタル化への対応も急務です。電子記録の保存、デジタルアーカイブの公開、資料のデジタル化、そしてデジタルデータの長期保存のための技術的知識と倫理的配慮が不可欠です。資料の劣化問題への対策も重要です。

日本のアーキビストは、これらの課題に取り組みながら、将来世代のために貴重な情報を守り、活用していくための努力を続けています。

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