アーサフ・ハーン

アブール＝ハサン・アーサフ・ハーン

アブール＝ハサン・アーサフ・ハーン（生年不詳 - 1641年6月12日）は、ムガル帝国において重要な政治的役割を果たした武将であり宰相でもありました。彼は有名な妻ムムターズ・マハルの父であり、娘婿であったシャー・ジャハーンの帝位継承に大きく寄与しました。

初期の生涯

アーサフ・ハーンは1569年、イラン系貴族の家系であるミールザー・ギヤース・ベグの息子として生を受けました。彼の人生は、ムガル帝国の歴史と深く結びついており、特に彼の政治的な影響力は計り知れません。

政治的台頭

1610年頃、皇帝ジャハーンギールが病を抱えるようになり、その間の国政はアーサフ・ハーンと彼の家族が掌握しました。特に、彼の姉であるヌール・ジャハーンとアーサフ・ハーンの父は、権力の中心であった皇子フッラム（後のシャー・ジャハーン）を支えていました。アーサフ・ハーンは1612年に娘ムムターズ・マハルをフッラムに嫁がせており、この結びつきが後の権力闘争に大きな影響を与えました。

ジャハーンギールの死と権力移行

1627年10月28日、ジャハーンギールがカシミールからパンジャーブのラホールへ向かう途中に死去したとき、重要な歴史的瞬間が訪れました。その時、ヌール・ジャハーンとアーサフ・ハーンは現場に居合わせていましたが、皇位継承者であるフッラムとシャフリヤールは現場にいませんでした。アーサフ・ハーンはフッラムが戻るまでの間、傀儡の皇帝ダーワル・バフシュを立てるという戦略を採用しました。

権力の掌握

その後、アーサフ・ハーンはシャフリヤールの軍を打ち破り、彼を捕虜にします。この過程で、彼の姉ヌール・ジャハーンは実質的に失脚しました。1628年1月24日、フッラムはアーグラに入城し、「シャー・ジャハーン」と名乗り、2月14日には皇帝に即位しました。彼の即位に伴い、ヌール・ジャハーンが支持していたシャフリヤールを含む多くの皇族が処刑されました。

拘束と帰還

フッラムはデカンにいた際にこの事態を知り、アーサフ・ハーンにダーワル・バフシュや他の皇子たちの捕縛を命じます。その後、彼はアーグラに戻り、政権を安定させようとしました。

最後の生涯

1641年6月12日、アーサフ・ハーンは死去しました。彼の死はムガル帝国における新たな時代の幕開けを意味していました。アーサフ・ハーンは、皇族政治の複雑さ、権力闘争、そして家族間の絆が如何に影響を与えたかを象徴する人物です。

参考文献

• - アンドレ・クロー 著、杉村裕史 訳『ムガル帝国の興亡』法政大学出版局、2001年。
• - フランシス・ロビンソン 著、月森左知 訳『ムガル皇帝歴代誌 インド、イラン、中央アジアのイスラーム諸王国の興亡（1206年 - 1925年）』創元社、2009年。

関連項目

• - ムガル帝国
• - ムムターズ・マハル
• - シャーイスタ・ハーン
• - アーサフ・ハーン廟

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