カシミール

カシミールの歴史と現状

カシミール（カシミール語: کٔشِیر / कॅशीर、英語: Kashmir、ウルドゥー語: کشمیر‎）は、インド北部とパキスタン北東部の国境に広がる山岳地域です。この地域には、8051mで世界で二番目に高いK2がそびえるカラコルム山脈があります。カシミールは、自然の美しさと複雑な歴史を併せ持ち、多様な文化が融合する場所です。

カシミールの帰属問題

カシミールの帰属を巡る争いは、インド、パキスタン、中国の三国間で続いており、特にインドとパキスタンの対立が顕著です。中世にはカシミール・スルターン朝が支配していましたが、その時期に多くの住民がムスリムに改宗しました。この地域における対立の根底には、イスラム教徒とヒンドゥー教徒の間の対立があります。インドの実効支配地域では、イスラム教系の組織が独立を求める運動を展開し、これが広義のカシミール問題に関与しています。

日本の教育用地図帳では、カシミール地域の分割と帰属に関する三国の主張を反映し、軍事境界線である実効支配線のみに焦点を合わせています。

各国の実効支配地域

• - インド: かつてのジャンムー・カシミール藩王国地域で、現在はジャンムー・カシミール連邦直轄領とラダック連邦直轄領に分かれています。地域は、文化や宗教により、カシミール渓谷（95%がムスリム）、ジャンムー地域（ヒンドゥー過半数）、ラダック地域（仏教徒とムスリムがほぼ半数ずつ）に分かれています。州都のシュリーナガルは、その自然美で知られています。
• - パキスタン: 実効支配地域は、ギルギット・バルティスタン及びアザド・カシミールと称されています。
• - 中国: ラダック地方の東半分を占めるアクサイチンとカラコルム回廊が支配されています。

歴史の流れ

18世紀には、ドゥッラーニー朝とムガル帝国が弱体化し、カシミールには新興のシク王国が登場しました。ヒマラヤ山脈とカラコルムの間に位置するこの地域は、1834年にシク王国の支配下に入りました。1845年にはシク王国とチベット間で戦争が開かれ、その後イギリスの間接支配下でジャンムー・カシミール藩王国が成立しました。

カシミール紛争

1947年にイギリスがインドから撤退する際、カシミールの藩王ハリ・シングはどう帰属を決定するかの難しい立場にありました。住民の80%がムスリムであったにも関わらず、彼自身はヒンドゥー教徒で、独立も考えていました。パキスタンによる武力介入があったため、ハリ・シングはインドへの帰属を選択し、初の印パ戦争が始まりました。この対立はその後も続き、紛争は主に領有権を巡るものであり、多くの犠牲を出しています。

現代の状況

2000年代後半、インドはジャンムー・カシミールの特別自治権を弱め、これに対する抗議運動が起きました。2019年には特別自治権を廃止し、地域は新たな抑圧を受けています。また、カシミール於けるテロ事件も頻発し、パキスタン支援の武装勢力とインド軍の間の衝突が続いています。特にモディ首相の政権下での強硬政策は、地域の緊張を一層高めています。

住民と文化

カシミールの住民は主にカシミール人やラージプート、またヒンドゥー教、イスラム教、仏教など様々な宗教に属しています。カシミール語、ラダック語、バルティ語など、複数の言語がそれぞれの地域で話されています。この地域のイスラム教はスーフィズムの影響を色濃く受けており、独特の信仰が根付いています。また、ラダックではチベット仏教が信仰されており、特にその文化は重要な役割を果たしています。

カシミール地方は、自然の美しさと多様性、複雑な歴史を持つ魅力的な地域であり、今後もその動向には注目が必要です。

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