アーサー・C・コープ賞

アーサー・C・コープ賞について

アーサー・C・コープ賞（Arthur C. Cope Award）は、有機化学の分野において顕著な功績を上げた研究者に贈られる、アメリカ合衆国を代表する権威ある学術賞です。この賞は、著名な化学者であったアーサー・C・コープの遺志に基づき設立されたアーサー・C・コープ基金の主催により運営されており、アメリカ化学会（American Chemical Society, ACS）によって1973年以来、毎年（または隔年）授与されています。

賞の歴史と意義

1973年に第一回の授与が行われて以来、アーサー・C・コープ賞は半世紀以上の歴史を積み重ねてきました。この賞の設立目的は、有機化学における独創的かつ影響力の大きい研究、例えば新しい合成手法の開発、反応機構の解明、理論有機化学への貢献など、分野の発展に決定的な役割を果たした業績を顕彰することにあります。受賞者には、研究の継続を支援するための資金も提供されることが一般的であり、その点でも有機化学研究の推進に大きく寄与しています。

著名な受賞者

アーサー・C・コープ賞の受賞者リストには、有機化学分野の世界的なリーダーたちが名を連ねています。多くの受賞者が後にノーベル化学賞を受賞するなど、この賞がその後の国際的な評価につながるケースも少なくありません。

初期の受賞者には、フロンティアを開拓したロアルド・ホフマン、ロバート・バーンズ・ウッドワードといった著名な化学者が含まれます。また、その後の受賞者には、ドナルド・クラム、イライアス・コーリー、ギルバート・ストーク、バリー・シャープレス、野依良治、ジョージ・オラー、ロバート・グラブス、フレイザー・ストッダート、キャロライン・ベルトッツィなど、現代有機化学の基盤を築いた錚々たる顔ぶれが並びます。

特に日本人研究者としては、構造有機化学の世界的権威である中西香爾博士（1990年）、不斉触媒反応の研究でノーベル化学賞を受賞された野依良治博士（1997年）、そして糖鎖化学に貢献された翁啓恵博士（2012年）がこの賞を受賞しており、日本における有機化学研究の国際的なレベルの高さを証明しています。

近年の受賞者には、ステファン・バックワルド（2013年）、スチュアート・シュライバー（2014年）、キャロライン・ベルトッツィ（2017年）、ジョン・ハートウィグ（2021年）、ヴェロニク・ガヴァヌール（2022年）など、現代有機化学の最前線で活躍する研究者が続いています。

受賞者リスト（一部抜粋）

1973年：ロアルド・ホフマン、ロバート・バーンズ・ウッドワード
1974年：ドナルド・クラム
1976年：イライアス・コーリー
1990年：中西香爾
1992年：バリー・シャープレス
1997年：野依良治
2002年：ロバート・グラブス
2012年：翁啓恵
2017年：キャロライン・ベルトッツィ
2022年：Véronique Gouverneur
2023年：Scott E. Denmark
2024年：William L. Jorgensen

結び

アーサー・C・コープ賞は、有機化学分野における過去の偉大な業績を称えるとともに、将来の研究を奨励する上で極めて重要な役割を担っています。この賞の歴史は、そのまま有機化学の進歩の歴史とも言え、今後も新たなフロンティアを開拓する研究者がこの栄誉に輝くことでしょう。詳細な情報や全受賞者リストについては、アメリカ化学会またはアーサー・C・コープ賞の公式サイトを参照してください。

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