アーセナル・シップ

アーセナル・シップとは

アーセナル・シップ（Arsenal ship）は、アメリカ海軍が20世紀末に構想した新たな戦闘艦の種別で、主に対地攻撃用のミサイルを大量に搭載することを目指した艦です。直訳すると「兵器庫艦」となるこの名称は、一般的に広く知られているわけではありませんが、その概要は独特の戦闘能力を持つ艦への新しいアプローチとして注目を集めました。

この艦の特徴としては、大型で外洋を航行できる船体に多くの垂直発射システム（VLS）を搭載し、強力な対地攻撃能力を持っています。興味深い点は、自衛用の兵装や戦闘用レーダーを極力省略し、攻撃に特化した設計思想が貫かれているところです。アメリカ海軍はこの艦を「21世紀の戦艦」と位置付けていました。

コンセプトの背景

従来の戦闘艦は、各種センサーを駆使して多面的な情報を収集し、的確に攻撃を行うことが求められていました。しかし、これには高度な訓練を受けた多くの乗員と高価な電子機器が必要です。アーセナル・シップはこれを逆手に取り、他の艦から受け取った攻撃目標のデータを使用することで、自艦の運用コストや人員を削減できるという利点を持っています。

具体的には、CEC（共同交戦能力）と呼ばれる情報共有システムを利用し、他の艦のレーダー情報を活用していました。これにより、必要なデータを外部から送信し、電子機器を搭載しないアーセナル・シップでも効果的に戦闘を行うことが可能となります。

開発の経緯

アーセナル・シップの発端は1988年に発行されたアメリカ海軍協会誌に掲載された艦の構想から始まります。1995年には海軍での開発が正式に開始され、航空母艦の代替となる新たな打撃力としてその必要性が認識されるようになりました。

1998年度の予算では、VLSやCECの実証試験を行うための艦の建造が予定されましたが、内外の不安要素や経済的な理由から計画は急速に後退しました。特に、当時の作戦部長が自殺したことが大きな影響を与え、最終的には開発計画は頓挫してしまいます。

船体設計

アーセナル・シップの設計は、ステルス性を重視しており、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦に似た形状を持っています。艦体のほとんどの部分には約500セルのVLSが搭載される予定でした。また、5インチ砲や多連装ロケットシステム（MLRS）も計画されていましたが、格納庫を持たないため、補給支援は限定的です。乗員数は50名程度と少なく、被害を受けた際の艦内の対応力を高めるため、二重船殻構造が考慮されています。

韓国における類似計画

アーセナル・シップの構想を受け、韓国でも「合同火力艦」と呼ばれる新たな艦の開発が始まりました。これは、敵地の陸上ターゲットを攻撃するために設計され、精密誘導兵器を搭載しています。

韓国の国防部はこれをアーセナル・シップに類似した艦として位置づけ、2020～2024年の国防計画に含めました。

関連作品

アーセナル・シップは、フィクション作品でもその概念が取り入れられており、小説『征途』やゲーム『Modern Warships』などに登場しています。これらの作品では、アーセナル・シップの持つ戦闘能力が描かれ、リアルな戦闘環境の中でその戦術が試されています。

アーセナル・シップの構想は、未来の戦闘艦の在り方に一石を投じたものであり、その影響は現在も続いていると言えるでしょう。

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