アーニョロ・ガッディ

アーニョロ・ガッディ（Agnolo Gaddi, 1350年頃 - 1396年）は、14世紀後半のフィレンツェで活躍したイタリアの画家です。父は同じく画家であるタッデオ・ガッディで、ジョットの弟子でした。アーニョロは、父を通じてジョットの画風を深く学び、その継承者とみなされていました。しかし、彼の作品はジョットのそれよりも動きがあり、色彩も独自のものを用いるなど、独自の表現を確立しました。

生涯

アーニョロ・ガッディは、1350年頃にフィレンツェで生まれました。正確な生年は不明ですが、1381年に30歳以上でなければ就けない公職に就いた記録があることから、生年が推定されました。1387年には、画家ギルドである聖ルカ組合に登録されています。ジョットの強い影響を受け、その画風を継承した最後の画家の一人とされています。

アーニョロの作品には、宗教的なテーマを扱ったものが多く、フレスコ画や祭壇画などでその才能を発揮しました。ジョットの作風を受け継ぎながらも、より動きのある人物表現や独自の色彩感覚を取り入れ、独自のスタイルを確立しました。彼の作品は、ルネサンス絵画の先駆けとしての重要な位置を占めています。

弟子たち

アーニョロは、多くの弟子を育成し、その中には後世に名を残す画家もいました。彼の弟子として最も有名なのは、絵画の技法書『美術の書（Il Libro dell’Arte）』を著したチェンニーノ・チェンニーニです。他にも、ゲラルド・スタルニーナやロレンツォ・モナコなど、著名な画家たちがアーニョロの元で学びました。これらの弟子たちは、師の画風を受け継ぎながらも、独自の表現を追求し、ルネサンス美術の発展に貢献しました。

主な作品

アーニョロ・ガッディの主な作品としては、以下のようなものがあります。

サンタ・クローチェ聖堂のフレスコ画: フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂には、アーニョロが手がけた聖歌隊席のフレスコ画が残されています。これは彼の代表作の一つであり、その高い画力がうかがえます。
聖者たちと天使たちと玉座の聖母: 1380年から1390年の間に制作されたテンペラ画で、三連祭壇画としてシトー会修道院に依頼された可能性が高い作品です。現在は、ナショナル・ギャラリー（ワシントン）に所蔵されています。
聖母戴冠: 1380年頃から1390年頃に制作されたテンペラ画で、木板に描かれています。おそらくピサ近郊の教会にあった祭壇画の中央の板であったと考えられています。現在はナショナル・ギャラリー（ロンドン）に所蔵されています。
天使と謙譲の聖母: 1390年代中頃に制作されたテンペラ画で、板に描かれています。現在はThe Gummer Museum of Art & Gardensに所蔵されています。
* キリスト磔刑: テンペラ画で、木板に描かれた多翼祭壇画の一部です。現在はウフィツィ美術館に所蔵されています。

これらの作品は、アーニョロ・ガッディの卓越した画力と、ルネサンス絵画の発展における重要な位置を示しています。

まとめ

アーニョロ・ガッディは、ジョットの画風を継承しながらも、独自の表現を確立した画家であり、その作品はルネサンス美術の発展に大きな影響を与えました。彼の弟子たちもまた、その影響を受け、ルネサンス美術をさらに発展させました。アーニョロ・ガッディは、14世紀のイタリア美術を語る上で欠かせない重要な人物です。

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