アーノルト (鉄道模型)

アーノルド：Nゲージ鉄道模型史に名を刻む老舗メーカー

アーノルド社は、1906年、ドイツのニュルンベルクでカール・アーノルトによって設立された玩具メーカーです。当初はブリキ製の玩具などを製造していましたが、第二次世界大戦後の復興期に鉄道模型へと事業を拡大。Nゲージ規格の確立に大きく貢献したことで知られています。

戦火を乗り越え、Nゲージの礎を築く

創業者のカール・アーノルドは、船舶模型やドールハウスなど、多様な玩具の製造・販売を手掛け、着実に事業を拡大していきました。しかし、第二次世界大戦中の空襲により、ニュルンベルクにあった工場は全焼。しかし、カールの息子であるエルンスト・アーノルトと、長年会社に貢献したマックス・エルンストの尽力により、戦後、ミュールハウゼンに工場を再建。ブリキ製の自動車や船、航空機、そして鉄道車両の製造を再開しました。

1960年、アーノルド社は電動式の鉄道模型「アーノルド・ラピード200」を発売します。縮尺は1/200を標榜していましたが、実際には車両や線路の縮尺が厳密に統一されていませんでした。同年、イギリスのローンスター社が発売した「トレブル・オー・レクトリック」は、1/152の縮尺と9mmの軌間を採用し、スケール感においてアーノルド・ラピード200を凌駕しました。

この経験を踏まえ、アーノルド社は1962年、軌間9mm、縮尺1/160の「アーノルド・ラピード」を発表。高いスケール性と完成度が評価され、他のメーカーも追随。この規格は1964年以降、Nゲージと呼ばれるようになり、アーノルド社はNゲージ規格の先駆けとして位置づけられることになります。

国際的な提携とブランド変遷

1968年からは、アメリカのレベル社と提携し、アメリカの鉄道模型市場への進出を図り、製品開発にも協力関係を築きました。1975年には「ラピード」ブランドを廃止し、「Arnold N」へとブランド名を変更します。1976年には、創業時からアーノルド社を支えたマックス・エルンストが退職。その後もアーノルド家は経営を継続しましたが、1995年には残念ながら倒産。1997年にはイタリアのリマ・リバロッシグループに買収されました。

買収後もアーノルドブランドは維持され、リマ・リバロッシグループが製造していたNゲージ製品やアーノルド社独自の製品が販売されました。しかし、2003年にリマ・リバロッシグループも倒産。2004年にはイギリスのホーンビィ社に買収され、現在に至ります。生産拠点は中国に移転しましたが、アーノルドブランドはホーンビィ社傘下で存続し、現在もNゲージ製品を提供し続けています。

アーノルドカプラー：Nゲージの標準カプラー

アーノルド社は1963年、独自の連結器である「アーノルドカプラー」を開発しました。これは、バネと基部形状による復元力により、車両同士を容易に連結できる画期的なものでした。その優れた互換性から、ニュルンベルク国際玩具見本市での協議を経て、Nゲージの共通カプラーとして採用され、広く普及することになります。アーノルドカプラーは、連結の容易さ、安定性、そして遠隔操作による連結・解放の容易さから、現在も多くのNゲージ愛好家に支持されています。近年は、よりリアルな連結器を求める傾向から、車体マウント式の連結器なども登場しており、アーノルドカプラーのシェアは低下傾向にありますが、その歴史的意義は揺るぎません。

製品の特徴

アーノルド社の製品は、主にプラスチック製の射出成形で製造されており、動力車にはダイカスト製の亜鉛合金パーツも使用。架線集電方式の車両も多いです。車両はヨーロッパの鉄道車両を中心に展開されてきましたが、過去にはアメリカの鉄道車両も製造していました。線路は道床なしの組み立て式とフレキシブル線がラインナップされており、本格的なレイアウト制作にも対応しています。

結論

アーノルド社は、戦後の混乱期からNゲージ規格の確立、そしてグローバル化の波の中で、常に変化を乗り越え、進化を遂げてきたメーカーです。アーノルドカプラーをはじめとする革新的な製品、そして長年にわたるNゲージへの貢献は、鉄道模型史に大きな足跡を残しました。現在もホーンビィ社傘下でその歴史と技術を受け継ぎ、多くのNゲージファンに愛され続けています。

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