アーピラナ・ンガタ

アーピラナ・トゥルパ・ンガタ：マオリの文化と政治を牽引した先駆者

アーピラナ・トゥルパ・ンガタ（Sir Āpirana Turupa Ngata, 1874年7月3日 - 1950年7月14日）は、ニュージーランドの著名なマオリの政治家であり、弁護士、学者、文化の擁護者として多岐にわたる活躍をしました。彼は、マオリ文化と言語の保護と促進に尽力し、マオリの人々の権利向上に大きく貢献したことで知られています。

生い立ちと教育

ンガタは、ニュージーランドの北東海岸にあるテ・アラロア（当時はカワカワと呼ばれていた）で、15人兄弟の1人として生まれました。父は部族の指導者で伝承の専門家であるパラテネ・ンガタ、母はスコットランド人のアベル・ノックスの娘カテリナ・ナキでした。ンガタはマオリ語を母語とする環境で育ちましたが、父の意向により、パーケハー（ヨーロッパ系ニュージーランド人）の文化も学ぶ機会を与えられました。ワイオマタティニの小学校を経て、テ・アウテ・カレッジで西洋式の教育を受け、その後、カンタベリー大学で政治学を、オークランド大学で法学を修めました。彼は、ニュージーランドの大学で学位を取得した最初のマオリであり、2つの学位を取得した最初のニュージーランド人となりました。

結婚と家族

法学の学位を取得する前年の1895年、ンガタは同じ部族のアリヒア・カネ・タマティと結婚しました。夫妻の間には6人の娘と5人の息子、合計11人の子供が生まれました。ンガタは法的資格を得た後、故郷に戻り、地域社会の発展に尽力しました。彼はマオリの社会経済状況を改善するために尽力し、マオリ文化の現代における位置づけについても幅広く執筆しました。

政治家としてのキャリア

ンガタは、自由党政権の内務大臣だったジェイムズ・キャロルとの親交をきっかけに政界入りしました。1905年の選挙で東部マオリ選挙区から自由党の議員として選出され、その後40年近く議席を保持しました。議会では、卓越した演説家としての地位を確立し、マオリの権利擁護のために活動しました。彼は、マオリの土地売却を奨励する政策を批判し、マオリ土地協議会の副大臣も務めました。

第一次世界大戦では、マオリ兵士の募集に尽力し、部族の兵役への貢献は、パーケハーからの信頼を得るのに役立ちました。彼は、マオリの文化的発展にも力を入れ、伝統的な集会所の建設や、ハカ、ポイダンス、伝統彫刻の振興に貢献しました。

マオリの興味

ンガタは、学術的な活動にも熱心であり、マオリ文化に関する多くの著作を発表しました。特に、マオリの歌のコレクションである「ンガ・モテアテア」は彼の代表作の一つです。彼は、マオリ文化の保護と発展に力を注ぎ、テ・プエアが始めたハカ、ポイダンス、伝統彫刻の振興にも貢献しました。マオリのスポーツの振興にも取り組み、部族間の競技やトーナメントを奨励しました。

ンガタは、マオリの英国国教会内での地位向上にも尽力し、マオリの司教の創設を支援しました。また、マオリ語の研究を大学で認めるよう運動し、1928年に教養学士号の資格として認められるようになりました。

土地開発と論争

ンガタは、マオリの土地開発にも深く関わり、複数の所有者がいる土地を農場経営者の下で統合する土地合併計画を推進しました。彼は、マオリの経済状況を改善するために尽力しましたが、一方で、巨額の支出と行政怠慢を批判され、1934年に大臣を辞任せざるを得なくなりました。しかし、彼の土地開発は、マオリの人々の生活水準を向上させ、雇用を創出したという側面もあります。

大臣としての活躍と辞任

1928年、ンガタは統一党（旧自由党）の勝利により内閣に返り咲き、マオリ大臣に就任しました。彼は、土地改革とマオリの土地開発を奨励し、マオリ社会の活性化に尽力しました。しかし、彼が指示した大量の活動が組織的な問題を引き起こし、部下の不正会計が発覚したことから、公的規制を無視したとして批判を受けました。彼は、自身の行動に対する責任を認め、大臣の地位を解任されました。

後世への遺産

ンガタは、内閣を辞任した後も議会に留まり、マオリの事柄について政府に助言を与え続けました。彼は、マオリの文化と権利の向上に多大な貢献をしたことで知られており、その功績はニュージーランドの50ドル紙幣に描かれています。彼の業績は、マオリの文化と言語に多大な貢献をしたことで知られ、その影響は今日にも及んでいます。

家族

ンガタの最後の娘、マテ・フアタヒ・カイワイは、2009年に94歳で亡くなりました。また、末子のヘナレ・ンガタは、2011年に亡くなりました。彼の孫のホーリ・マフエ・ンガタは、広く使われているマオリ語-英語の辞書を執筆しました。

アーピラナ・トゥルパ・ンガタは、その複雑な遺産を通じて、ニュージーランドの歴史において重要な人物であり続け、彼の貢献は今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。

参考資料

Binney, Judith (1995). Redemption Songs: A Life of Te Kooti Arikirangi Te Turuki. Auckland University Press.
Fry, Plantagenet Somerset (1994). The Dorling Kindersley History Of The World. Dorling Kindersley Ltd.
Gustafson, Barry (1986). The First 50 Years : A History of the New Zealand National Party. Auckland: Reed Methuen.
King, Michael (1977). Te Puea: A Biography. Auckland: Hodder and Stoughton.
King, Michael (2003). Te Puea. Reed Publishing.
Wilson, James Oakley (1985). New Zealand Parliamentary Record, 1840–1984 (4th ed.). Wellington: V.R. Ward, Govt. Printer.

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