アームストロング・シドレー サファイア

サファイア（Sapphire）

サファイアは、アームストロング・シドレーが開発した単軸ターボジェットエンジンです。このエンジンは、第二次世界大戦中のメトロヴィック F.2を前身とし、戦後に開発が進められました。同エンジンは、イギリスを中心に量産され、アメリカではライト J65として派生型が製造されました。興味深いことに、サファイアは民間用途には転用されなかったため、技術的には重要視される一方で、一般的な知名度は低い点が特徴です。

開発の背景

1940年代初頭、連合国側初の軸流ターボジェットエンジンとして、メトロヴィック F.2の開発が始まりました。このプロジェクトは、アラン・アーノルド・グリフィスを中心にした王立航空研究所（RAE）の指導のもと行われたものの、実用化には至りませんでした。1946年にメトロヴィックからアームストロング・シドレーへと事業が移行し、F.2/4の発展型としてサファイアの開発が進められることになります。

サファイアの開発は、当初からさまざまな政治的および技術的な障壁に直面しました。特に、ロールス・ロイス社のエイヴォンエンジンに対する優遇や、その技術的信頼性の高さが、サファイアの研究と開発を後押しする大きな要因となりました。しかし、サファイア自体も高温高圧下での性能を追求した結果、高圧バーナーを備えた特徴的な設計となり、1948年には初火入れに成功します。

実用化と性能

1950年代初頭、サファイアの最終モデルとしてSa.6が登場しました。このモデルは、その優れた性能から広く採用されました。特に、海面高度での8,300 lbfの推力と、優れた燃費性能は評価され、多くの航空機に搭載されることとなります。サファイアはホーカー ハンターやイングリッシュ・エレクトリック P.1などの有名な軍用機にも搭載され、その安定性の高さから高い評価を受けました。

一方で、サファイアはその後の技術革新の影に隠れることになります。特に、ロールス・ロイスのエイヴォンやアメリカのP&W J57の登場により、サファイアの利用は限られていくことになります。サファイアは少数しか生産されなかったものの、その功績は消えることなく、後世に多大な影響を与えました。

結論

サファイアは、アームストロング・シドレーによって開発された重要なターボジェットエンジンであり、多くの技術的革新をもたらしました。民間用途には転用されなかったものの、その設計思想や得られた知見は、以降の航空機エンジン技術に大きな影響を与え続けています。サファイアとその派生型は、航空機開発史において特筆すべき存在として位置づけられるでしょう。

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