イェスデル (サルジウト部)

イェスデル（? - 1307年）は、モンゴル帝国に仕えた将軍であり、サルジウト部という部族の出身です。彼の家系は代々軍事に関わっており、祖父のタイダルと父のネウリンは、モンケ皇帝によって四川方面の軍司令官に任命され、南宋との戦いで多くの功績を挙げていました。イェスデルもまた、その家系の流れを汲み、軍人として頭角を現しました。

1274年、イェスデルはクビライに仕え、行枢密院に配属されます。そこで軍事に関する知識や戦略を学び、武将としての基礎を築きました。彼の初陣は嘉定の包囲戦であり、3000の兵を率いて南宋の将軍、昝万寿の軍を破り、500もの首級を挙げるという目覚ましい戦果を上げました。この功績により、彼は六翼ダルガチという地位に任じられます。この敗戦後、昝万寿は配下の武将、李立を派遣し、嘉定を含む複数の城寨をモンゴルに投降させました。

また、同時期に枢密院副使のクトが重慶攻略に失敗し更迭されたため、新たにブカが後任として任命されます。イェスデルはブカの軍に加わり、重慶攻略に参加しました。彼はわずか20騎余りを率いて城門を攻撃し、南宋の将軍、趙安を討ち取るという大胆な作戦を実行しました。この戦いで500以上の首級を挙げ、趙安は降伏、別の将軍である張玨は逃亡しましたが、イェスデルは涪州まで追撃し、捕虜としました。この功績を聞いたクビライは、イェスデルに玉帯と多額の褒賞を与え、西川蒙古軍馬六翼新附軍招討使という地位に任命し、さらに四川西道宣慰使及び都元帥に昇格させました。

その後、羅氏鬼国の亦奚不薛が反乱を起こすと、朝廷は四川方面の兵を集め、イェスデルを指揮官に任命して鎮圧に向かわせました。亦奚不薛は阿麻と阿豆を先鋒として派遣しましたが、イェスデルはこれを打ち破り、二人を討ち取りました。これにより、亦奚不薛は5万戸余りを率いて投降し、反乱は鎮圧されました。この功績により、イェスデルはさらに西川等処行中書省右丞に任じられました。

オルジェイトゥ・カアン（成宗テムル）の治世には四川行省平章を、クルク・カアン（武宗カイシャン）の治世には雲南行省左丞相を歴任しました。その後、南方に遠征した際に病にかかり、成都に帰還した後に亡くなりました。彼の死後、その地位は弟のバラクが引き継ぎました。

イェスデルの一族は、サルジウト部の中でも特にボロルタイ家が有名であり、彼の一族からは多くの高官が輩出されました。彼の功績は元朝の歴史に深く刻まれ、その名は後世にまで伝えられています。

サルジウト部ボロルタイ家
ボロルタイ
都元帥タイダル
都元帥ネウリン
雲南行省左丞相イェスデル
四川行省平章政事ナンギャダイ
四川行省左丞相タシュ・バートル
太保・中書右丞相ボロト・テムル
雲南行省左丞シリム
左丞イジル・ブカ
四川行省左丞バヤン
* 蒙古軍万戸バラク

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