イェドリク・アーニョシュ

イェドリク・アーニョシュ・イシュトヴァーン（1800年-1895年）は、ハンガリーとスロバキアで高く評価されている発明家、技術者、そして物理学者です。ベネディクト会司祭という立場でありながら、科学技術の発展に多大な貢献を果たしました。彼は、ハンガリー科学アカデミー会員でもあり、数々の著書も出版しています。

イェドリクは、現在のスロバキアにあたる地域で生まれ、ナジソンバトとポジョニ（現在のブラチスラヴァ）で高校教育を受けました。1817年にベネディクト会に入信し、同修道会で研究を続けました。その後、ベネディクト会の学校で講師を務め、1839年からはブダペシュト大学理学部物理学科で40年間教鞭をとり、多くの物理学者を育成しました。彼の教育活動は、ハンガリーにおける物理学の発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

特筆すべきは、彼が教育にあたり、ラテン語ではなくハンガリー語を採用したことです。1845年から母国語であるハンガリー語での授業を開始し、物理学用語のハンガリー語への翻訳にも尽力しました。言語学者である従兄弟の協力を得て、ハンガリー語で書かれた物理学の教科書を出版し、ハンガリー語による物理学教育の礎を築きました。1848年には学部長、1863年には学長に就任するなど、大学においても指導的な役割を担いました。

1858年にはハンガリー科学アカデミーの客員となり、1873年には名誉会員に選ばれました。彼の科学者としての業績は高く評価されており、特にダイナモの発明は彼の名声を不動のものとしました。しかしながら、彼の最も重要な発明である発電機の試作品については、1856年までは公表されていませんでした。大学の資産目録にその発明品が言及されたのは1861年になってからです。

イェドリクは、1827年から「lightning-magnetic self-rotor」と名付けた電磁回転装置の実験を開始しました。この装置は、静止部品と回転部品の両方に電磁石を使用し、永久磁石に頼らずに回転運動を生み出す画期的なものでした。この発明は、後のジーメンスの発明よりも6年も先行するものでしたが、発表が遅れたため、その功績は長く知られることはありませんでした。一般的には、ヴェルナー・フォン・ジーメンスがダイナモの発明者として認識されています。

1873年のウィーン万国博覧会では、自作の避雷針を出展しました。引退後も研究を続け、ジュールの修道院で亡くなりました。

イェドリクのダイナモは、自励作用の原理に基づいています。電磁石を用いて磁界を発生させ、その磁界によってコイルに電流を誘導する仕組みです。コイルが磁力線を横切ることで電流が誘導され、回転運動が継続的に行われます。整流子によって電流の方向を制御することで、外部回路に一定方向の電流を供給することが可能です。この自励式ダイナモの概念は、ジーメンスやホイートストンよりも6年も早く、イェドリクがすでに確立していました。

イェドリク・アーニョシュ・イシュトヴァーンは、その発明と教育活動を通じて、ハンガリー、そして世界の科学技術の発展に大きく貢献した人物と言えます。彼の業績は、現代の電気工学の基礎を築いたものであり、その功績は改めて高く評価されるべきでしょう。

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