ベネディクト会

ベネディクト会について

ベネディクト会（Ordo Sancti Benedicti）は、529年にヌルシアのベネディクトゥスによってイタリアのモンテ・カッシーノに設立された、カトリック教会の最古の修道会です。この会は、修道士が「服従」「清貧」「童貞」という三つの戒律に基づいて生活し、黒い修道服を着ることから「黒い修道士」とも称されます。ベネディクトゥスが定めた「聖ベネディクトの戒律」は、12世紀まで西方教会における唯一の修道会規範であり、その後、多くの修道会に影響を与えました。

歴史的背景

ベネディクトゥスの妹であるスコラスティカも、彼の教えに基づいて女子修道院を設立し、修道会の精神を広めました。この会の修道士たちは、「清貧」「従順」「貞潔」および「定住」の誓いを立て、修道院における労働と祈りの共同生活に従事することが求められました。その結果、ベネディクト会は観想修道会の基準を確立しました。

ベネディクト会の影響はイタリアだけにとどまらず、現在のイギリス、ドイツ、デンマーク、スカンジナビア半島、アイスランド、スイス、スペインなど広範囲に及びました。中世ヨーロッパにおいて、伝道、神学、歴史記録、自然研究、芸術、建築など、多くの分野で重要な役割を果たしました。

クリュニー改革と衰退

修道院が広大な領地や富を持つようになると、教会の改革を目指してクリュニー会がベネディクト会から分派しました。910年から始まったクリュニー改革運動は、ベネディクト会に大きな影響を与えました。しかし、12世紀半ばからベネディクト会は世俗的な影響によって衰退し始めます。1400年ごろから再興運動が始まりました。加えて、カマルドリ会やシトー会、厳律シトー会（トラピスト会）など、数多くの修道会がベネディクト会から派生しましたが、本会自体も存続を続けています。

現代のベネディクト会

ベネディクト会の修道院の中には、エステ家の枢機卿イッポーリト2世・デステによって1565年頃から改修された荘厳な建物もあり、2001年には世界遺産として登録されました。宗教改革の時代には、伝道活動が打撃を受けたため、イギリス、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの修道院は解散を余儀なくされ、ドイツでも多くの修道院が喪失しました。19世紀初期には、西欧各国での世俗化の波により、多くの修道院が解散しましたが、1830年ごろから次第に復興の兆しが見え始め、近代に入ると学問研究や典礼運動により復興を果たしました。

日本においては、厳律シトー会に属する北海道北斗市のトラピスト修道院を通じて、ベネディクト会の活動について知ることができます。さらに、ベネディクト会出身の著名な人物としては、ピウス7世というローマ教皇が挙げられます。

このように、ベネディクト会は長い歴史を持ちつつ、現代でもその活動を続けている、重要な宗教団体であると言えるでしょう。

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