イエスタデイ (フォリナーの曲)

フォリナーが1984年に発表したアルバム『プロヴォカトゥール』から、2枚目のシングルとしてカットされた楽曲が「イエスタデイ」（原題：That Was Yesterday）です。この曲は、バンドの中心メンバーであるルー・グラムとミック・ジョーンズの共作によって生まれました。フォリナーの多くのヒット曲の中でも、特に印象的なバラードとして知られています。

この「イエスタデイ」という楽曲は、リリースに際して複数の異なるバージョンが存在することが特徴です。具体的には、シングルとして発表されたリミックス・バージョンに加え、最も多くのリスナーに親しまれているエクステンデッド・リミックス、さらにオーケストラ・アレンジを施したバージョン、そしてアルバムに収録されたオリジナル・バージョンという、合計4種類の異なるサウンドを楽しむことができます。それぞれのバージョンによって、曲の雰囲気や聴こえ方が subtle に変化しており、ファンにとっては興味深い聴き比べの対象となっています。

A面である「イエスタデイ」は、前述の通りルー・グラムとミック・ジョーンズの共同作業によって生み出されました。一方、このシングルのB面に収められた「トゥ・ディファレント・ワールズ」（Two Different Worlds）は、ヴォーカリストであるルー・グラムが単独で作曲を手掛けた楽曲です。これは、ルー・グラムにとって初めてシングルとして公式にリリースされた、彼自身のペンによる楽曲という点で、キャリア上重要な意味を持つ一曲と言えるでしょう。

「イエスタデイ」は、商業的にも大きな成功を収めました。特にアメリカのビルボードチャートにおいて顕著な成績を残しており、総合シングルチャートであるBillboard Hot 100では最高位12位を記録しました。また、ロック系のチャートではメインストリーム・ロック部門で4位にランクインし、アダルト・コンテンポラリー部門でも24位となるなど、幅広い層からの支持を集めたことが分かります。アメリカ国外でも人気は高く、イギリスではチャート最高位28位、オランダでは19位、スイスでは29位、そしてドイツでは31位をマークするなど、主要な音楽市場でトップ40入りを果たしています。これらのチャートアクションは、「イエスタデイ」が世界的なヒット曲であったことを明確に示しています。

数あるバージョンの中でも、特に人気のエクステンデッド・リミックスは、イントロ部分にオリジナルのバージョンにはない歌詞が追加されている点が大きな特徴です。この追加された歌詞を含むエクステンデッド・バージョンのパフォーマンスは、フォリナーのライブ映像作品であるDVD「オール・アクセス・トゥナイト - 25 - ライヴ・イン・コンサート」の中で実際に聴くことができます。このDVDに収録されているライブ映像は、アメリカ合衆国アラバマ州にあるバーミングハム・ジェファーソン・シヴィック・センターで撮影されたものです。ライブならではの迫力と共に、この特別なバージョンを楽しむことができます。

音楽評論家からの評価も高く、例えば著名な音楽データベースサイトであるオールミュージックの批評家、ブレット・アダムスは、この「イエスタデイ」を「素晴らしいヒットシングル」と称賛しています。彼はその評価の根拠として、一度聴いたら忘れられないような「キャッチーなコーラス」と、楽曲全体を彩る「見事なシンセサイザーリック」を特に挙げています。これらの要素が組み合わさることで、「イエスタデイ」は単なるバラードにとどまらない、印象深い楽曲として完成されていると言えるでしょう。

「イエスタデイ」は、フォリナーのキャリアにおいて重要な位置を占める楽曲であり、複数のバージョン展開、国内外でのチャート成功、そして批評家からの肯定的な評価といった多角的な側面から、その普遍的な魅力を放ち続けています。彼らの洗練されたサウンドとルー・グラムのエモーショナルなヴォーカルが絶妙に融合したこの曲は、今なお多くの音楽ファンに愛されています。

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