イオタラム酸

• - イオタラム酸 (Iotalamic Acid)

イオタラム酸は、医療画像診断において用いられるヨウ素含有の放射線造影剤です。体内の特定構造をX線画像上でより鮮明に映し出す目的で使用されます。ヨウ素原子の高いX線吸収能力を利用して、周囲組織とのコントラストを高め、血管や臓器の構造、病変などの識別を容易にします。診断の精度向上に貢献する重要な薬剤です。

本薬剤は、主にイオタラム酸ナトリウムおよびイオタラム酸メグルミンという二種類の塩の形態で製剤化されています。これらの塩は、薬剤の水溶性や体内での挙動に影響を与えます。市場では「Conray」などの商品名で提供されています。

臨床での投与経路は、診断目的や対象部位によって異なります。広く用いられるのは静脈内投与で、血管系や血流豊富な臓器（腎臓、肝臓など）の造影に利用されます。また、膀胱内に直接注入する経路もあり、これは膀胱の形態や機能に関する診断（膀胱造影など）で使用されます。適切な投与経路の選択が、質の高い診断画像を得る上で重要です。

イオタラム酸には、通常のX線造影剤に加え、放射性同位体を用いた特殊な製剤も存在します。それが、放射性ヨウ素125（I-125）で標識されたイオタラム酸ナトリウムI-125注射液です。この製剤は「Glofil-125」として製品化されています。通常の造影剤が形態情報の取得を目的とするのに対し、この放射性製剤は、主に腎臓の機能評価に特化して使用されます。

特に、イオタラム酸ナトリウムI-125注射液は、腎臓病の診断や経過観察において、腎機能の重要な指標である糸球体濾過量（GFR）を評価するために応用されます。イオタラム酸は、腎臓の糸球体で濾過された後、尿細管での再吸収や分泌がほとんどなく、そのまま尿中に排泄されるという特性を持ちます。この性質を利用し、放射性標識されたイオタラム酸の体内からの消失や尿中への排泄を測定することで、GFRを正確に算出できます。腎機能障害の評価や治療効果判定に不可欠な検査手法であり、本製剤はその重要なツールの一つです。

このように、イオタラム酸は、X線造影剤として形態情報の提供、放射性医薬品として機能情報の提供と、医療診断の様々な局面で活用される多目的な薬剤です。患者さんの病態把握と適切な医療提供に重要な役割を果たしています。使用にあたっては、専門医の管理下で適切に行われます。

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