イカリア自由国

イカリア自由国（ギリシャ語: Ελευθέρα Πολιτεία Ικαρίας）は、1912年にエーゲ海のイカリア島に短期間存在した独立国家です。長らくオスマン帝国の支配下に置かれていたこの島は、1912年7月17日、島民たちがオスマン駐屯軍を追放したことで独立を達成しました。

この独立運動において、エヴディロス出身のジョージ・N・スパノスは英雄として称えられています。彼は独立が宣言された1912年7月17日、オスマン帝国軍による待ち伏せに遭い、命を落としました。彼の功績を称え、イカリア島のクリソストモスにある彼が暗殺された場所には記念碑が建てられており、そこには弾帯を身につけライフルを手に持った彼の胸像を見ることができます。

独立翌日の1912年7月18日には、正式にイカリア自由国の独立が宣言されました。この新たな共和国には、隣接するフルノイ・コルセオン諸島も解放されてその領域に組み込まれました。イオアニス・マラキアスが初代大統領に就任しましたが、彼はこの短命な国家にとって唯一の大統領でもありました。

イカリア自由国は、わずか5ヶ月間という短い期間ではありましたが、独自の政府機構を備え、軍隊、国旗、国章、郵便切手、そして「イカリアの国歌」（コンスタンティノス・プサコス作曲、フラギスコス・カレール作詞）を持つ、れっきとした独立国家として機能しました。しかし、この独立期間は平穏なものではありませんでした。島は深刻な食糧不足に直面し、さらにイタリアが支配するエーゲ海諸島の一部となる可能性といった外部からの脅威にもさらされていました。

独立直後に勃発した第一次バルカン戦争は、イカリア自由国の運命に大きな影響を与えました。自由国が保有する唯一の軍艦であった「クレオパトラ号」は、この戦争中にギリシャ海軍が占領したサモス島やキオス島といった周辺の島々へ、食料や物資を供給するための重要な役割を果たしました。

しかし、イカリア自由国の独立は長くは続きませんでした。1912年11月4日、第一次バルカン戦争の最中に、イカリアは公式にギリシャ王国へ併合されることとなりました。その後のロンドン条約において、オスマン帝国もイカリア島を含むエーゲ海諸島の大部分がギリシャに帰属することを正式に承認するに至り、イカリア自由国の短い歴史に幕が下ろされたのです。

短期間の存在であったイカリア自由国ですが、オスマン帝国からの解放と独立を目指した島民の熱意、そして困難な時代における自治の試みとして、イカリア島の歴史において重要な一頁を刻んでいます。

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