イカリソウ属

イカリソウ属（Epimedium）

イカリソウ属は、メギ科に分類される多年草のグループで、学名は Epimedium といいます。和名では、花の形が船の錨（いかり）に似ていることから「碇草属」または「錨草属」と表記されます。

特徴

イカリソウ属の植物は、地下茎を伸ばして繁殖し、多数のひげ根を生やします。茎の根元部分には、数枚の根出葉と鱗片葉が見られます。日本産の種では、茎につく葉は通常1枚で、1-3回3出複葉、または1-2回2出複葉という複雑な形をしています。小葉はほぼ卵形で、基部は心形になるのが特徴です。根出葉と茎につく葉は形がよく似ていますが、茎につく葉の方が葉柄が短い傾向があります。

花序は、茎の先端から総状または円錐状に分枝してつき、多くの花を咲かせます。茎葉が直立しているため、花序が茎葉に側生しているように見えることもあります。萼片は8個あり、開花時には外側の小型の4片が早く落ち、内側の4片は花弁のように見えます。花弁は4個で、蜜腺を持ち、種によっては距（きょ）と呼ばれる細長い突起になるものもあります。雄蕊は4個、葯は外側を向いています。雌蕊は1個で、多数の胚珠を2列に並べて持ちます。果実は袋果で、成熟すると大きさが異なる2片に分かれます。

分布

イカリソウ属は、主に中国大陸に多くの種が分布しており、その他にインド（ヒマラヤ西部）、日本、朝鮮半島、ロシア極東部、南ヨーロッパ、北アフリカなど、比較的広い範囲に分布しています。全世界で約60種が知られており、日本には5-6種が自生しています。

日本に分布する主な種

バイカイカリソウ (Epimedium diphyllum)：白い花を咲かせ、距がないのが特徴です。本州の中国地方、四国、九州に分布します。
サイコクイカリソウ (Epimedium diphyllum subsp. kitamuranum)：バイカイカリソウの亜種で、四国の吉野川流域に特産します。環境省レッドリストの絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
ヤチマタイカリソウ (Epimedium grandiflorum var. grandiflorum)：イカリソウの基本種で、白い花を咲かせます。石灰岩地に生え、本州の近畿地方、四国に分布します。環境省レッドリストの準絶滅危惧(NT)に指定されています。
イカリソウ (Epimedium grandiflorum var. thunbergianum)：淡紫色の花を咲かせ、北海道の渡島半島、本州の主に太平洋側に分布します。
キバナイカリソウ (Epimedium koreanum)：淡黄色の花を咲かせます。北海道の渡島半島、本州の主に日本海側、朝鮮半島北部、ウスリー地方に分布します。
クモイイカリソウ (Epimedium koreanum var. coelestre)：キバナイカリソウの変種で、小葉の縁に刺状の毛がありません。群馬県の谷川岳、至仏山などの蛇紋岩地帯に特産します。環境省レッドリストの絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
トキワイカリソウ (Epimedium sempervirens)：葉が常緑で、本州の北陸地方から山陰地方に分布します。
ヒメイカリソウ (Epimedium trifoliatobinatum)：四国の蛇紋岩地帯に特産します。バイカイカリソウとイカリソウの交雑起源と考えられています。
シオミイカリソウ (Epimedium trifoliatobinatum subsp. maritimum)：ヒメイカリソウの亜種で、葉が常緑です。九州の東部の海岸付近、島部に分布します。環境省レッドリストの準絶滅危惧(NT)に指定されています。
オオバイカイカリソウ (Epimedium × setosum)：本州の中国地方に分布し、石灰岩地にまれに産します。花色、距の有無など形態の変異が大きく、バイカイカリソウとトキワイカリソウの交雑に由来する群です。

その他

中国原産の栽培種であるホザキノイカリソウ (Epimedium sagittatum) は、江戸時代に日本に渡来し、まれに植栽されています。全草は淫羊藿（いんようかく）という生薬で、強壮・強精剤として利用されます。

イカリソウ属の植物は、その独特な花の形と多様な種類で、多くの人々を魅了しています。しかし、中には絶滅の危機に瀕している種もあるため、保護の取り組みが重要となっています。

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