蛇紋岩

蛇紋岩（じゃもんがん）とは

蛇紋岩は、その名の通り、表面に蛇のような模様が見られる岩石です。これは、主成分である蛇紋石が複雑な構造を持つためです。蛇紋岩は、変成岩または火成岩中の超塩基性岩のいずれかに分類されます。

生成過程

蛇紋岩は、主に超塩基性岩であるかんらん岩などが、水と反応する蛇紋岩化作用（または蛇紋石化作用）によって生成されます。この反応は、主にカンラン石と水が反応し、蛇紋石と磁鉄鉱が生成されることで進行します。蛇紋岩化作用の程度は様々で、弱いものは原岩の鉱物が残り、強いものではほぼ全てが蛇紋石化します。

以下に、蛇紋石化作用の化学反応式の一例を示します。

例1

`2Mg2SiO4 + 3H2O → Mg3Si2O5(OH)4 + Mg(OH)2`

例2

`3Mg2SiO4 + SiO2 + 4H2O → 2Mg3Si2O5(OH)4`

特徴

蛇紋岩は、地質構造線や断層に沿って広く分布しています。含水鉱物であるため風化しやすく、もろくて崩れやすい性質を持ちます。そのため、蛇紋岩地帯は地すべりが起こりやすく、土木工事では難工事となることがあります。特に、蛇紋岩層を貫くトンネルの掘削には、特別な注意が必要です。

また、蛇紋岩の表面は粘土鉱物を含み、平滑になっていることが多いです。断層などの滑り面では、強い鏡のような光沢が見られることもあります。登山では滑落事故の原因となるため、注意が必要です。

利用

蛇紋岩は、クロム、石綿、ニッケルなどの鉱物資源を含むことがあり、セメントの材料や石材として利用されることがあります。また、農業分野では苦土肥料の原料としても使用されています。しかし、蛇紋岩に含まれる石綿が健康被害を引き起こすこともあり、注意が必要です。

農業への利用

蛇紋岩は、マグネシウムを多く含むため、苦土肥料として利用されます。しかし、作物によっては生育障害を引き起こすことがあります。例えば、クワでは過剰なニッケル、ミカンではモリブデン欠乏が報告されています。

蛇紋岩米

蛇紋岩質の土壌は、マグネシウムとカリウムに富んでおり、特定の地域では、この土壌で栽培された米がブランド化されています。兵庫県養父市では、八木川が蛇紋岩を削ることで形成された土壌で育てられた米が「蛇紋岩米」として知られています。

その他の情報

2016年5月10日には、日本地質学会によって蛇紋岩が「岩手県の岩石」に選定されました。

脚注

参考文献
都城秋穂・久城育夫『岩石学II - 岩石の性質と分類』共立出版〈共立全書〉、1975年、ISBN 4-320-00205-9。
黒田吉益・諏訪兼位『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』共立出版、1983年、ISBN 4-320-04578-5。
豊遙秋・青木正博『検索入門 鉱物・岩石』保育社、1996年、ISBN 4-586-31040-5。

関連項目
岩石
火成岩
変成岩
岩石の一覧
蛇紋石
地すべり

外部リンク
蛇紋岩（地質標本館）
蛇紋岩 岐阜大学教育学部理科教育講座（地学） 理科教材データベース

以上が、蛇紋岩に関する詳細な説明です。

もう一度検索