イギリスの地方行政区画

イギリスの地方行政区画：複雑な歴史と多様な構造

イギリスの地方行政区画は、その複雑さと多様さで知られています。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの構成国それぞれで、独自の行政区分が存在し、その構造は歴史的経緯や政治的状況を反映した複雑な様相を呈しています。数百年におよぶ変遷を経て現在の体系が形成され、近年においても、伝統的な区分からの移行が継続的に進められています。

連合王国の構成と歴史

イギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの構成国から成る連合王国です。これらの構成国は、歴史的にはそれぞれ独立した国家でしたが、1707年の合同法によりイングランドとスコットランドがグレートブリテン王国を形成し、さらに1800年の合同法でアイルランド王国と連合してグレートブリテンおよびアイルランド連合王国が誕生しました。その後、1922年のアイルランド自由国の独立を経て、現在のグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国となりました。

イングランドとウェールズは、多くの法律を共有することなどから、一体として扱われる場合も多いですが、スコットランドと北アイルランドは独自の法体系を有しています。

各構成国の地方行政区画

イングランド

イングランドには独自の議会や政府はなく、9つのリージョンに大別されています。ロンドンリージョンは、シティ・オブ・ロンドンと32のロンドン特別区からなるグレーターロンドンとして特別に扱われ、グレーター・ロンドン・オーソリティーが行政を担っています。

その他のリージョンは、都市および非都市カウンティに区分され、さらにそれぞれがシティ、バラ、ロイヤル・バラ、都市バラ、ディストリクトなど、様々な名称で呼ばれる下位区分に細分化されています。また、カウンティとディストリクトの機能を統合した単一自治体も存在します。

ディストリクトレベルの下にはシヴィル・パリッシュがありますが、全国的な設置はされていません。パリッシュカウンシルは、村や小さな町などのコミュニティに存在しますが、グレーターロンドン内では設置が禁止されています。地理的区分としては、伝統的なカウンティに似た典礼カウンティ（地理的カウンティ）も用いられています。

スコットランド

スコットランドは、独自の立法府であるスコットランド議会と行政庁であるスコットランド政府を有しています。国レベルの下には、32のカウンシル・エリア（単一自治体）が存在し、均一的な区分となっています。ただし、郊外のカウンシル・エリアでは、様々なレベルのエリア委員会やコミュニティカウンシルが存在しますが、全国的な設置はされていません。

ウェールズ

ウェールズは、公選のウェールズ議会とウェールズ行政庁を有しています。国レベルの下には、22の単一行政体（10のカウンティバラ、9のカウンティ、3のシティ）があり、その下位区分には、イングランドのパリッシュと同様の権能を持つコミュニティカウンシルが存在します。

北アイルランド

北アイルランドは、ベルファスト合意に基づき北アイルランド議会と北アイルランド執行部が設置されています。しかし、執行権が停止されている期間は、北アイルランド相が管理し、ウェストミンスター議会が立法を行う直接統治が行われます。2015年には、伝統的な6県が廃止され、11の行政区が新たに設置されました。

その他の区分

上記以外にも、マン島、ジャージー島、ガーンジー島といった王室保護領がありますが、これらは連合王国の一部ではありません。また、スコットランド高地やロンドン通勤圏など、非公式な区分も存在します。さらに、欧州統計局や国際標準化機構は、イギリスの地方行政区画とそのコードを作成し、国際的な基準を提供しています。

イギリスの地方行政区画は、歴史、政治、そして地理的要因が複雑に絡み合った結果として生まれた、多様な構造となっています。今後も、社会情勢の変化に伴い、その構造は進化を続けると考えられます。

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