イギリスの運河

イギリスの運河：歴史と再生

イギリスの運河は、豊かな歴史と変化に富んだ役割を担ってきました。灌漑用水路として始まったその歴史は、産業革命を支える重要な交通路へと発展し、現代では観光資源として新たな魅力を放っています。かつては衰退の時代もありましたが、近年は再び脚光を浴び、閉鎖された運河の復活や新たな運河の建設も進んでいます。驚くべきことに、1971年以降、イギリスにおける水運による貨物輸送量は、トンキロ換算で鉄道を凌駕するシェアを維持しています。

商業運河の歴史：産業革命の原動力

イギリスにおける運河の歴史は、ローマ時代の灌漑用水路にまで遡ります。その後、河川を繋ぐ運航用の運河も建設され、内陸の水運需要に対応してきました。しかし、初期の運河は現代の運河とは異なり、排水路との構造的な違いがほとんどありませんでした。

グレートブリテン島の運河ネットワークは、新規建設よりも既存河川の改良による整備が中心でした。水門と曳道を備えた最初の運河は、1564年から1567年にかけてエクセターに建設されたエクセター運河です。全長3マイル、幅16フィート、水深3フィートと小規模ながら、3ヶ所の閘門を持つ当時としては画期的なものでした。

18世紀、産業革命による輸送需要の高まりと共に、運河は劇的な発展を遂げます。当時の道路事情は、大量輸送に適していませんでした。そのため、運河は産業革命の進展に不可欠な存在だったのです。馬車鉄道は存在しましたが、特に壊れやすい陶器などの製品を大量輸送するには、道路の整備が不十分でした。運河船は陸路よりも迅速かつ安全に、大量の貨物を輸送できたのです。

ブリッジウォーター運河（イギリス初の近代的人工運河）の成功は、産業の中心地、町、港を繋ぐ運河建設を加速させました。石炭や木材などの資源や製品が大量に運搬され、企業家のみならず一般家庭にも大きな利益をもたらしました。マンチェスターでは、ブリッジウォーター運河の開通後、石炭価格が75％も下落したと言われています。

18世紀末から19世紀初頭にかけて、産業革命が本格化すると、運河は技術革新を繰り返し、繁栄を極めます。初期の運河は丘陵地を迂回していましたが、閘門（ロック）の導入により、高低差のある場所でも航行が可能になりました。さらに、水路橋やトンネルによって、より直線的なルートが実現しました。

しかし、19世紀半ば以降、鉄道の台頭により、運河は次第にその地位を失っていきます。特に、狭路の閘門や橋は、鉄道の輸送能力に劣っていました。鉄道の方が早く、安く、大量輸送が可能だったため、経済的に優位に立ったのです。多くの運河は鉄道会社に買収され、放棄されました。

その後も、カレドニア運河やマンチェスター船舶運河といった広路運河の建設や、革新的な石炭運搬船「トム・プディング」の登場など、技術革新は続きました。しかし、1905年のニュー・ジャンクション運河建設を最後に、20世紀末まで新たな運河は建設されませんでした。競争激化により、馬力によるナロウボートはディーゼル船に取って代わられ、船夫たちは水上生活を送るようになりました。

水上輸送は、腐敗しにくい物資の輸送には依然として有効でしたが、1962年から63年の厳しい寒波により運河が凍結したことで、商業輸送は壊滅的な打撃を受けました。顧客は鉄道や道路輸送にシフトし、運河は衰退の一途を辿ります。

レジャー利用の成長：新たな可能性

20世紀後半、物資輸送としての役割を終えた運河は、歴史的価値やレジャー利用の観点から注目されるようになりました。L.T.C.ロルトの著書『ナロウボート』は、この流れに大きな影響を与えました。内陸水運協会（Inland Waterways Association）の設立や、レンタルボート事業の興隆も、レジャー利用の拡大に貢献しました。

人々はナロウボートを借りて運河を遊覧し、沿岸の町や村を訪れるようになりました。休日の過ごし方として運河旅行が定着し、その人気は広まりました。運河旅行は、自然を楽しめ、費用を抑えられ、多様な景観を楽しめることから、多くの人々に愛されるようになりました。

この人気を背景に、地方自治体は運河の整備を進め、観光客誘致に力を入れるようになりました。人々の運河への関心の高まりは、新たな運河建設にも繋がっています。21世紀初頭には、フェンス運河リンクの建設も開始されました。アンダートン・ボート・リフトの修復やファルカーク・ホイールの建設など、大規模プロジェクトにも投資が行われました。

現在の状況：観光と新たな可能性

現在、グレートブリテン島には数千マイルもの運河ネットワークが張り巡らされています。大部分はイングランドとウェールズを繋ぎ、主要港湾とも接続しています。このネットワークは、長さ56フィート以下のナロウボートで航行可能です。独立したルートも存在します。

内陸水運協会の活動は、閉鎖された運河の再開に貢献しました。2005年の報道では、イギリス水路庁が貨物輸送量の増加を目指していることが伝えられました。現在でも、多くの運河でレジャーボートが活躍し、イギリスの運河は観光資源として新たな息吹を吹き込まれています。

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