イサベル・デ・アラゴン・イ・シシリア

イサベル・デ・アラゴン・イ・シシリア（西：Isabel de Aragón y Sicilia）は、1271年1月4日にアラゴン王ペドロ3世と王妃コンスタンサ・デ・シシリアの間に生まれ、後にポルトガル王ディニス1世の王妃となった人物です。彼女は、カトリック教会において聖人として列聖されており、ポルトガルでは聖イザベル王妃、日本のカトリック教会では聖エリザベト（ポルトガル）皇后として知られています。ポルトガル語ではイザベル（Isabel de Aragão）、カタルーニャ語ではエリサベ（Elisabet d'Aragó）と呼ばれます。

幼少の頃から、イサベルは非常に敬虔なカトリック教徒としての信仰を深めていきました。少女時代にはすでに、貧しい人々や病に苦しむ人々への奉仕活動を日々の信仰の一部として行っており、この献身的な姿勢は、後にポルトガル王妃となってからも変わることはありませんでした。彼女の周りには常に多くの人々が集まり、その徳と人柄によって深い人望を集めましたが、同時に、そのような彼女に対する妬みの感情も少なからず生じました。

夫であるディニス王との間には、コンスタンサ（後にカスティーリャ王フェルナンド4世の妃となる）とアフォンソという二人の子供が生まれました。特に王子の誕生は、王位継承に関わる問題を引き起こす種となります。王子アフォンソは、父であるディニス王が、庶子である異母弟に王位を譲ろうとしているのではないかという邪な疑念を抱き、1323年にはついに父に対して反乱を起こすという事態に至りました。この父子の激しい対立に対し、イサベルは自ら進んで仲介に乗り出し、粘り強い説得と尽力によって、最終的に父子間の和解を成立させることができました。

1325年にディニス王が崩御すると、息子のアフォンソがアフォンソ4世としてポルトガル王位を継承しました。イサベルは王太后として、自身がコインブラに寄進したフランシスコ会系の貧者クラレス修道院へ引退することを決めました。これは、残りの人生を世俗から離れ、弱き人々のための奉仕に捧げたいという彼女の強い願いからでした。しかし、彼女は再び争いの仲介者として表舞台に立たざるを得ない状況に直面します。

1336年、息子であるアフォンソ4世が、娘であるマリア（カスティーリャ王アルフォンソ11世の妃）がその夫から虐待を受けているとして、カスティーリャへの出兵を決断し、ポルトガルとカスティーリャは一触即発の危機に瀕しました。イサベルはすでに老齢で体力も衰えていましたが、この国家間の重大な危機を見過ごすことはできませんでした。二人の王が対峙するエストレモスへ急行し、身を挺して両者の争いを鎮め、和平へと導いたのです。

この和平成立からほどなくして、イサベルはエストレモスで体調を崩し、熱病により1336年7月4日に生涯を終えました。彼女の遺体は、生前に自身が引退を望んだコインブラの貧者クラレス修道院に埋葬されました。

没後、1612年には彼女の遺体が腐敗していないという奇跡が確認されたと伝えられています。この奇跡的な出来事もあり、1625年5月25日にはローマ教皇ウルバノ8世によって正式にカトリック教会の聖人として列聖されました。聖イサベル王妃は、その篤い信仰、弱者への深い慈しみ、そして平和を求める不屈の精神によって、今なお多くの人々に記憶され、崇敬されています。

もう一度検索