エストレモス

ポルトガル南部のエヴォラ県に位置するエストレモスは、古くから良質な大理石の産地として名を馳せている町です。ボルバやヴィラ・ヴィソーザといった近隣の町々と共に、世界的な大理石供給地として知られ、その歴史は古代ローマ時代まで遡ります。

エストレモス産の大理石は、白を基調としたものから、クリーム色、ピンク、灰色、黒といった様々な色合いの縞模様が入るものが特徴です。中でも、柔らかなピンクの大理石は特に珍重されており、高い需要を誇ります。

その優れた品質から、古代より建築資材や彫刻材として広く利用されてきました。スペインのメリダにある、ローマ時代の競技場にもエストレモス産の大理石が使われていたという記録が残されています。さらに、ポルトガルの航海時代には、アフリカ、インド、ブラジルといった世界各地へ輸出され、国際的な交易にも貢献しました。

ポルトガルの象徴的な建造物にも、エストレモス産の大理石が多く使用されています。リスボン郊外のジェロニモス修道院、バターリャ修道院、アルコバッサ修道院、そしてベレンの塔など、数々の歴史的建造物の建築にその美しい大理石が用いられ、ポルトガルの文化遺産を彩っています。

現在でも、エストレモスでは大理石の採掘と加工が盛んに行われています。町の中を歩けば、建物の戸口や階段、道路などに大理石が使用されている様子を至る所で目にすることができます。また、家屋の壁を白く塗るホワイトウォッシュにも、大理石が用いられるなど、人々の生活に深く根付いた素材となっています。

ポルトガルはイタリアのカッラーラに次ぐ、世界第二位の大理石輸出国として知られていますが、その輸出量の85％以上、実に37万トン以上もの大理石が、エストレモスとその周辺地域で産出されています。これは、エストレモスの経済において大理石産業がいかに重要な役割を担っているかを示す、重要な指標と言えるでしょう。

なお、エストレモスという地名は、オランダのエレクトロニカミュージックグループ、E.S. Posthumusの楽曲名にも使われています。このことは、世界中の人々にとって、エストレモスという地名、そしてその大理石が持つ魅力を象徴的に示していると言えるでしょう。

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