イザベル1世 (エルサレム女王)

イザベル1世：エルサレム王国の激動を生き抜いた女王

イザベル1世（1172年 - 1205年）は、エルサレム女王として、その短い生涯の中で激動の時代を生き抜きました。父はエルサレム王アモーリー1世、母はビザンツ帝国皇女マリア・コムネナであり、異母兄姉にボードゥアン4世とシビーユがいました。

王位継承の混乱

異母兄ボードゥアン4世はハンセン病を患っており、後継者問題が深刻でした。当初は異母姉シビーユの子ボードゥアン5世が後継者とされましたが、彼も若くして亡くなり、シビーユとその夫ギー・ド・リュジニャンがエルサレム王位を継承します。しかし、1190年にシビーユとギーの間に生まれた2人の娘が相次いで死去したことで、王位継承権はイザベルに移りました。

波乱に満ちた結婚生活

イザベルの結婚生活は、政治情勢に大きく翻弄されました。最初の結婚は、前アンティオキア公の義理の息子にあたるオンフロワ4世・ド・トロンでしたが、これは後に無効とされます。モンフェラート侯コンラート1世は、イザベルの母マリア・コムネナの協力を得てイザベルと結婚し、エルサレム王位を主張しました。しかし、コンラートは王位に就く直前に暗殺され、イザベルはリチャード1世の提案で、シャンパーニュ伯アンリ2世と結婚しました。

アンリとの間には後にエルサレム女王となるマリーアが生まれますが、アンリもまた事故死してしまいます。その後、イザベルはキプロス王エメリー・ド・リュジニャンと4度目の結婚をしました。エメリーはギー・ド・リュジニャンの兄であり、この結婚によってイザベルはエルサレム王位を、エメリーはキプロス王位とエルサレム王位を兼ねることになりました。

女王としての統治と死

イザベルは、激動の時代の中でエルサレム女王としての責務を果たしました。彼女の治世は、十字軍国家の複雑な政治状況と深く結びついていました。1205年にイザベルが亡くなると、娘のマリーアがエルサレム女王となりました。

子女

イザベルは4度の結婚で多くの子をもうけました。オンフロワ4世との間には子供はいませんでしたが、コンラート1世との間にマリーア、アンリ2世との間にマリー、アリス、フィリパ、そしてエメリーとの間にシビーユとメリザンドをもうけました。

マリーア (1192年 - 1212年): エルサレム女王（在位：1205年 - 1212年）
マリー: 夭折
アリス (1195/96年 - 1246年): キプロス王ユーグ1世、アンティオキア公ボエモン5世、ラウール・ド・ソワソンと結婚
フィリパ (1197年頃 - 1250年): エラール・ド・ブリエンヌと結婚
シビーユ (1198年 - ?): アルメニア王レヴォン2世と結婚
メリザンド (1200年頃 - ?): アンティオキア公ボエモン4世と結婚

アリスとフィリパは、シャンパーニュ伯位を巡って従兄弟のティボー4世と争いました。イザベルの娘たちは、当時のヨーロッパ社会において重要な役割を果たしました。

参考文献

A.ジョティンシュキー『十字軍の歴史』刀水書房、2013年
アシル・リッシェール 『フランス中世の社会 フィリップ＝オーギュストの時代』 東京書籍、1990年

関連項目

* エルサレム国王一覧


イザベル1世は、十字軍時代のエルサレム王国において、政治的な混乱と個人的な苦難を経験した女性です。彼女の生涯は、当時の社会情勢と、王族の役割について深く考えさせられるものがあります。

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