イシスネフェルト1世

イシスネフェルト1世：古代エジプトの王妃の謎

イシスネフェルト1世は、古代エジプトの19王朝における重要な王妃の一人であり、その名は「美しき女神イシス」を意味します。彼女はファラオラムセス2世の妻として知られ、次のファラオであるメルエンプタハの母でもあります。イシスネフェルトが下エジプト、特にメンフィスやヘリオポリス、そして新首都ペル・ラムセスを代表する王妃であったと考えられています。彼女の出自や正妃としての立場、そして生涯には多くの謎が残されています。

出自の謎

イシスネフェルトの出自についてはさまざまな説が存在します。王族や貴族の称号を持っていなかったため、彼女は軍人の娘であったのか、下エジプトの貴族の出身であったのか、あるいはセティ1世の宮廷に仕官していた高官の娘であったのかに関して明確な証拠はありません。また、彼女が平民出身である可能性や、ファラオホルエムヘブの親族であったという説も提唱されています。さらに、長女ビントアナトの名前からシリア出身の可能性も指摘されていますが、いずれの説も確証を欠いています。

家族と子供たち

イシスネフェルトには、ラムセス2世の即位前から結婚していたと考えられる子供たちがいます。彼女には少なくとも3人の息子と1人の娘がいるとされ、彼らは全員がラムセス2世の宮廷で重要な役割を果たしていました。

• - ラムセス：第二王子で王太子。多くの称号を持ち、特に「王の右手の扇子持ち」として知られていましたが、治世の25年目に王太子に任命され、その後50年頃に命を落としました。
• - ビントアナト：第一王女で、ラムセス2世の正妃でもありました。彼女は父ラムセス2世との間に子供を持った唯一の娘です。彼女は「女性の相続者」などの称号を有していました。
• - カエムワセト：第四王子で王太子。彼は広範囲な分野で功績を残し、ラムセスの死後に王太子になるも、55年頃に亡くなりました。
• - メルエンプタハ：第十三王子で、19王朝の四代目ファラオとなり、40年に「軍隊の監督者」や兄の後を受けて「将軍」という地位に就きました。

なお、他にも数人の子供が推測されていますが、確証はありません。

生涯と記録

イシスネフェルトの生涯に関する詳しい記録は限られていますが、いくつかの碑文や彫像に彼女の存在が記されています。アスワンや西シルシラにある石碑には、ラムセス2世と彼女の子供たちが描かれています。また、西シルシラの石碑では、彼女がビントアナトと区別され、女神ハトホルの冠をかぶっている様子が表されています。これにより、彼女の存在が確認されると同時に、下エジプトにおける重要な地位を示す証拠となっています。

イシスネフェルトに関連するアート作品は、世界中の博物館、特にルーブル美術館やメトロポリタン美術館でも見ることができます。彼女の影響は時代を超えて、後の王妃たちや王女たちにも名付けられた名前として受け継がれています。イシスネフェルトはその存在によって古代エジプトの歴史に名を刻み続けているのです。

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