メルエンプタハ

メルエンプタハの生涯と治績

メルエンプタハ（Merenptah / Merneptah、紀元前1212年 - 紀元前1202年）は、古代エジプト第19王朝の第4代ファラオです。彼は偉大なファラオラムセス2世の第13子であり、王妃イシスネフェルト1世との間に生まれました。誕生名のメルエンプタハは彼の即位名であるバエンラー・メリネチェル（「ラーの魂、神々に愛されしもの」）に繋がっています。

メルエンプタハは、異母兄のアメンヘルケペシュエフ、同母兄のラムセス、さらに4番目の兄弟カエムワセトの死後に後継者として指名されました。彼は当時40歳を超えていましたが、父ラムセス2世はさらに20年近くも在位していたため、実際の即位は60歳を超えてからのことでした。この年齢での即位は当時の医学のレベルを考えると驚異的です。

彼には複数の王妃がいましたが、特に正妃にあたるのは姉妹か姪のイシスネフェルト2世です。彼の子供には、自身の名を継いだメルエンプタハ、そしてセティ2世が、また娘にはサ[[プタハ]]王の後に王位を継いだタウセルトが含まれます。他にもタカトとの間にアメンメセスが生まれました。

治績と軍事的勝利

メルエンプタハの治世において、彼は首都をペル・ラムセスからメンフィスに戻し、プタハ神殿の隣に新たな王宮を建設しました。この宮殿は1915年にペンシルベニア大学考古学人類学博物館のフィッシャーによって発掘されました。この時代のファラオとして、メルエンプタハはリビアからの侵攻に直面することになります。

長い間軍人としての経験を積んできた彼は、政治的な手腕には難がありましたが、努力と父から引き継いだ重臣たちの支えにより、徐々にその能力を向上させます。治世の5年目、彼はリビアの侵攻を海の民の援助を得て成功裡に撃退しました。この出来事は、カルナック神殿の第6塔門の壁面に詳細に記録されています。

当時、リビアの首長メリラーは多くの戦士を率いてエジプトに侵入しましたが、メルエンプタハは神からの啓示を受け、自らの軍を集結させます。激しい六時間の戦闘の末、無惨に散った敵の死者の数は6000人に達し、9000人が捕虜となりました。メルエンプタハはこれを誇り、敵兵に対して様々な手段を用いて戦果を確証しました。

また、彼はカナンの地での反乱を鎮圧し、「イスラエルは一掃され、その種はもはや無し」と記述されたことからも彼の統治下での戦果が窺えます。これは古代エジプト人がイスラエルという部族や民族を記録した重要な証拠とされています。

ミイラと遺物

メルエンプタハのミイラは最初にKV8に埋葬されたのち、1898年にアメンホテプ2世の墓のKV35で発見されました。彼のミイラは比較的保存状態が良好であり、盗掘による損傷を除けば、他のファラオと比較しても優れています。詳細な調査から、彼は身長171.4センチであり、死亡時には高齢であったため、関節炎や虫歯、動脈硬化といった様々な病に苦しんでいたことも考えられます。

彼の遺体はエジプト考古学博物館に所蔵されていましたが、2021年には「ファラオの黄金パレード」に伴い、エジプト国立文明博物館に移されました。

メルエンプタハの治世は軍事的な勝利と国家の発展があり、彼の遺産は今も古代エジプトの歴史の中で重要な役割を果たしています。

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