イシヅチテンナンショウ

イシヅチテンナンショウ（石鎚天南星）

イシヅチテンナンショウ（学名: Arisaema ishizuchiense）は日本の四国に自生するサトイモ科の多年草です。この植物は特に石鎚山系や剣山系のブナ帯林の上部に生息していますが、非常に稀に見られる存在です。地下に扁球形の球茎を持ち、植物体の高さは約15〜25cm程度になります。

特徴

イシヅチテンナンショウは、特徴的な偽茎部を持っており、その長さは一般的に短く、葉柄とほぼ同じかそれより長くなります。通常、葉は1枚で、稀に大型個体では2枚展開することもあります。葉は鳥足形状に分裂し、小葉が5枚から7枚に分かれ、先端がとがり、縁は不ぞろいな波状になるのが特徴です。

この植物の花期は5月で、葉と花序が地上に同時に伸びてきます。花序が先に展開し、その後に葉が広がります。花序柄の長さは7〜17cmほどあり、仏炎苞は紫褐色または緑紫色で、白い縦の条線が見られます。仏炎苞はやや大きめで、高さは5〜8cmになります。花序の付属体は基部に柄があり、棍棒のような形状で長さ6.5〜11cm、径は6〜10mmとなっています。果実は秋に鮮やかな赤色に熟します。

生育環境と分布

イシヅチテンナンショウは、四国の特定地域にのみ分布する日本固有種で、主にブナの森やササの多い斜面に育成します。このような限られた生育環境のため、個体数は非常に少なく、保全が求められています。

名前の由来

その名前は、植物学者の村田源（1956年）の命名に由来し、四国の石鎚山にちなみ「石鎚天南星」と名付けられました。村田はこの植物を石鎚山と筒上山の間のブナ林で発見しました。

保全状況

イシヅチテンナンショウは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類（CR）に指定されています。特に徳島県と高知県では深刻な危機にあり、採取や損傷が禁止されています。学術研究など特定の目的で採取する場合には、環境大臣の許可が必要です。

種の類似

この種は、ユモトマムシグサの亜種に似ており、これらの分類は過去において異なる視点が存在しました。特にカミコウチテンナンショウやハリノキテンナンショウとも形態的に似ており、以前の研究ではユモトマムシグサの亜種とされてきたことがあります。近年の分子系統解析が進展する中で、これらの亜種の位置づけについても新たな知見が得られています。

イシヅチテンナンショウは、その美しさと独自性から研究対象としての重要性も高く、未来の生態系を考える上でも欠かせない存在です。

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