イシドロ・マイケスの肖像

イシドロ・マイケスの肖像

『イシドロ・マイケスの肖像』（Retrato de Isidro Máiquez）は、1807年にスペインの著名なロマン主義画家フランシスコ・デ・ゴヤが手掛けた油彩の肖像画であり、現在はマドリードのプラド美術館に所蔵されています。この作品は、俳優として名を馳せたイシドロ・マイケスを描いており、彼の人物像だけでなく、当時の文化や社会状況も映し出しています。

イシドロ・マイケスの生涯

イシドロ・マイケスは1768年にカルタヘナに生まれました。旅芸人の家庭に育った彼は、若くしてマドリードに移り、演劇の道を選びます。女優のアントニア・プラドとの結婚後、さらなる高みを目指し、パリに渡って名優フランソワ＝ジョゼフ・タルマに指導を受けました。1801年にスペインに戻った後、彼は劇団を率いるまでに成長し、1802年にはウィリアム・シェイクスピアの『オセロ』で名声を得ます。

1808年、彼は市民蜂起に参加したためにフランスに連行されたものの、国王ホセ1世の恩赦を受けて帰国します。その後、自由を求める彼の姿勢が国王フェルナンド7世によって阻まれ、シウダー・レアルに追放されました。後にグラナダで生涯を終えました。

肖像画の特徴

この肖像では、マイケスがグレーの上着と白いシャツを着て、大きな椅子に腰掛けています。彼の顔は明るい光に照らされ、沈思するような表情で観る者を見つめています。特にその目には生き生きとした表情があり、彼の性格を映し出すかのようです。ゴヤはこの作品を通じて、複雑な心理状態をも見事に捉えています。

肖像の技法については、ゴヤが速い筆致で描き、マイケスの特徴を的確に表現しています。明るい部分に特に重点を置きつつ、全体的には素朴なタッチが印象的です。このアプローチによって、彼の人物像と気質が強烈に際立っています。画面右側には、1807年の署名があり、制作年を確認する手掛かりとなっています。

幕府発表と修復の歴史

描かれた肖像画は1808年、王立サン・フェルナンド美術アカデミーで展示され、1810年にはラファエル・エステベによって版画のモデルとして使用されました。来歴は不明の時期もありますが、1868年に発生したスペイン名誉革命の際、内務省に所蔵されていた際に損傷しました。修復のため、1871年にはプラド美術館に送られ、その落ち着きと修復技術が評価されました。

特に1872年には、プラド美術館の館長がこの肖像画を公開し、改めてその美術的価値が認識されます。その後、トリニダード国立美術館に一時移されましたが、最終的にプラド美術館に戻ることになりました。これにより、今日私たちはこの作品を鑑賞することができるのです。

結論

『イシドロ・マイケスの肖像』は、特にスペインのロマン主義やゴヤの画技を理解する上で欠かせない作品です。イシドロ・マイケスの生涯やスタイルを背景に、彼の姿を描いたこの肖像画は、未来にわたって多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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