イシュトヴァーン3世 (ハンガリー王)

イシュトヴァーン3世の生涯

イシュトヴァーン3世（III. István、1147年 - 1172年）は、ハンガリー王国のアールパード王朝に属する国王であり、1162年から1172年まで在位していました。彼は前国王ゲーザ2世の長子であり、母はキエフ大公ムスチスラフ1世の娘エフロシニアです。イシュトヴァーン3世の生涯は、早期の即位や激しい政争、外敵との戦いに彩られています。

家族背景と即位

イシュトヴァーン3世は、父であるゲーザ2世から後継者としての使命を受けて若干の年齢で即位しました。しかし、彼の統治は安定しなかったのです。なぜなら、彼の父の弟であるラースロー（後のラースロー2世）とイシュトヴァーン（後のイシュトヴァーン4世）が、当時の東ローマ帝国皇帝マヌエル1世コムネノスの保護を受けてコンスタンティノープルで生活していたからです。

王者としての試練

1162年、イシュトヴァーン3世はエステルゴム大司教ルカスの手によって正式に王冠を授けられました。しかし、まもなくして東ローマ帝国からの侵攻が始まり、男系年長者相続制を支持する貴族たちがラースローを支持し、イシュトヴァーン3世はポゾニー（現在のブラチスラヴァ）に逃げなければならなくなりました。

イシュトヴァーン3世は、ルカスの元で小さな宮廷を持つに過ぎず、僭称者ラースロー2世の戴冠が遅れている中、やがて彼の死（1163年）により新たにイシュトヴァーン4世が後継者として推されました。新王の政策は東ローマ帝国に従うものであったため、ハンガリー貴族の間に不満が広がり、族長ツザークらが反乱を起こしましたが、すぐに鎮圧されました。

再びの奪還

同時期、イシュトヴァーン3世は神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世の支援を受けて、1163年9月に叔父イシュトヴァーン4世の軍をセーケシュフェヘールヴァールで打ち破り、王位を取り戻しました。しかし彼はルカスの言葉に従い、叔父を釈放しました。後にイシュトヴァーン4世は東ローマ帝国へ亡命しました。

マヌエル1世コムネノスは、ハンガリーに対する野望を手放していませんでした。彼は再びハンガリーに侵攻してきますが、イシュトヴァーン3世はこれを撃退し、和平交渉を行いました。1164年には、マヌエル1世が王弟ベーラ公の領土を狙って兵を出すと、イシュトヴァーンはボヘミア王やオーストリア公の援軍を得て、皇帝軍に立ち向かいました。最終的にはボヘミア王の仲裁により、イシュトヴァーン3世は和平を結び、セレームゼーグ（シルミア）を東ローマへ譲る結果となりました。

不運な前途

1165年初頭、彼は一度セレームゼーグを再征服しましたが、マヌエル1世はすぐにこれを奪還しました。さらに、ボスニア、クロアチア、ダルマチアに目を向け、1166年に再度遠征を企画するも失敗に終わります。1168年、彼はオーストリア公ハインリヒ2世の娘アグネスと結婚し、ハインリヒ2世軍の支援が期待されましたが、ジモニー近郊で敗退する結果となりました。

このように、イシュトヴァーン3世は東ローマ帝国との対立を続け、そのために教会の資産を活用する姿勢を見せましたが、これが大司教ルカスとの対立を招き、最終的に教会法によって懲罰される事態に至りました。また、彼はテンプル騎士団に対し、ハンガリー国内に土地を提供しました。

突然の死

1172年、聖地への巡礼に向かう途中でハインリヒ2世と面会していたイシュトヴァーン3世は、突然の病に倒れ急死しました。彼の遺体はエステルゴムに埋葬され、その死は国に深い影響を与えることとなりました。彼の一生は、試練に満ちたものであり、波乱に富んだ歴史の一ページとして語り継がれています。

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