イシュー・スミス

イシュー・スミス（Ishe Smith）は、1978年7月22日にアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで生まれた元プロボクサーです。彼はラスベガス出身者として初めてボクシングの世界王座を獲得するという歴史的な快挙を成し遂げました。元IBF世界スーパーウェルター級王者であり、そのキャリアを通じて多くの強豪と拳を交えています。トレーナーは、世界的に有名なボクサー、フロイド・メイウェザー・ジュニアの叔父にあたるロジャー・メイウェザーが務めました。

スミスのボクシング人生は、2000年7月29日にプロデビューを飾ったことから始まりました。当初はそれほど広く知られた存在ではありませんでしたが、2004年にNBCが全米に向けて放送したボクシング版リアリティ番組「ザ・コンテンダー」に出演したことが転機となります。この番組を通して、彼の存在は一躍全米に知られることとなり、その後のキャリアを大きく左右することになります。

「ザ・コンテンダー」出演中の2004年9月12日には、後の2階級制覇王者となるランドール・ベイリーと対戦し、WBCアメリカ大陸、USBA、NABO北米のウェルター級地域王座統一戦に臨みました。この試合でスミスは2回にダウンを奪うなど優位に進め、判定勝利を収めて下部3団体の王座を獲得しました。しかし、「ザ・コンテンダー」の準決勝ではセルヒオ・モラと対戦し、僅差の判定で敗れています。

その後、スミスは減量苦を理由に2009年にミドル級への転向を決断しました。しかし、ミドル級での挑戦は厳しいものとなりました。2009年8月には、無敗だったダニエル・ジェイコブスとのNABO北米ミドル級王座決定戦に臨みましたが、判定で敗れました。さらに、2010年7月にはフェルナンド・ゲレーロとのNABF北米ミドル級王座決定戦でも判定負けを喫し、ミドル級での再起に成功することはできませんでした。

階級を再度調整したスミスは、スーパーウェルター級で世界王座を目指します。そして2013年2月23日、デトロイトのジョー・ルイス・アリーナで、当時のIBF世界スーパーウェルター級王者コーネリアス・バンドレイジに挑戦しました。この重要な一戦で、スミスは12ラウンドを戦い抜き、3-0の明白な判定勝利を収め、念願の世界王座獲得を果たしました。これは彼にとってキャリア最大の栄光であり、地元のラスベガスにとって歴史的な瞬間となりました。

しかし、その栄光は長くは続きませんでした。初防衛戦の相手は、指名挑戦者であるカルロス・モリーナ（メキシコ）に決定していましたが、当初予定されていた試合はスミスの負傷により延期となりました。そして、2013年9月14日、フロイド・メイウェザー・ジュニア対サウル・アルバレスという注目のビッグマッチの前座として、カルロス・モリーナとの指名防衛戦が行われました。激しい戦いとなりましたが、スミスは12ラウンド判定の末、1-2のスプリットデシジョンで敗北し、わずか7ヶ月で王座から陥落することとなりました。

王座陥落後も、スミスは世界のトップレベルでの戦いを続けました。2014年5月には、WBA世界スーパーウェルター級王者エリスランディ・ララへの挑戦が一度決定しましたが、ララの対戦相手変更により実現せず、代替試合で勝利を収めました。同年12月には改めてララの持つWBA世界王座に挑戦しましたが、判定負けを喫し、世界王座への返り咲きは叶いませんでした。

キャリア終盤には、ジュリアン・ウィリアムズやトニー・ハリソンといった実力者たちとも対戦しましたが、いずれも判定で敗れています。そして、2019年2月9日、エリクソン・ルービンとの試合で、プロキャリア初のKO負け（3回終了時棄権によるTKO）を喫しました。この試合から約1時間後、イシュー・スミスは長きにわたるプロボクシングキャリアからの引退を正式に表明しました。波乱万丈なキャリアを歩んだスミスは、ラスベガスボクシング界のパイオニアとしてその名を残しています。

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