イスメト・イノニュ

ムスタファ・イスメト・イノニュ

ムスタファ・イスメト・イノニュ（1884年9月24日 - 1973年12月25日）は、オスマン帝国の終焉とトルコ共和国の樹立に大きな影響を与えた軍人および政治家であり、同国の第2代大統領も務めました。彼の人生は、トルコの近代史における重要な局面と密接に結びついています。

生い立ちと初期の軍歴

イスメトは、スミルナ（現イズミル）で生まれ、父レシドと母ジェヴリイェのもとで育ちました。幼少期は父の転勤に伴い、多くの場所で生活をすることになりました。学校教育を受けた後、1901年にイスタンブールの陸軍工科学校に入校し、すぐに砲兵少尉として卒業しました。彼は、その後も陸軍大学を首席で卒業し、参謀大尉に昇進します。

イスメトは、オスマン帝国陸軍でさまざまな職務を務め、特に第一次世界大戦では重要な役割を果たしました。1914年から1917年の間に彼のキャリアは飛躍的に進展し、多くの戦闘に参加しました。1916年には、イスタンブールに帰還し、1913年に結婚した妻メヴヒーベとの間に3人の子どもが誕生しています。

トルコ共和国建国期

1920年、イスメトはムスタファ・ケマル・パシャと接触し、トルコの国民主義運動に関わるようになります。アンカラに到着後、国民議会が成立すると、彼はエディルネ選出の議員となり、軍司令官の職務を担います。特に希土戦争では重要な指揮を執り、1923年にはローザンヌ会議にも加わります。

大国民議会が共和制を宣言すると、彼は首相に任命され、以降の政権運営に大きく関与することになります。これにより、トルコは国家としてのアイデンティティを強化し、高度な近代化を目指す改革が進められました。

一党独裁時代

アタテュルク大統領の後、イスメトは自らが党首となり、さらに改革を進めることになります。1934年には「イノニュ」の姓を与えられ、国民の支持を集めました。しかし、急速に進化する世界情勢の中で、アタテュルクとの意見の相違が生じ、一時期失脚しますが、彼の後を受けて大統領に選ばれることとなります。

大統領として、彼は中立的な外交姿勢を取り、第二次世界大戦中はトルコが戦争に関与することを避けました。この時期、彼は国際的な取り決めや交渉において、巧みな立ち回りを見せ、トルコの立場を安定させました。

多党制時代

戦後、トルコはアメリカ側の陣営に加わる決断をし、これによりイノニュの政権は民主主義を強調する方向に舵を切ります。しかし、1950年の選挙で民主党が台頭し、彼は退任します。その後も野党の指導者として、影響力を持ち続けました。

1971年には軍の介入に際して対立が生じ、最終的には共和人民党の書記長を辞任し、終身上院議員となります。そして1973年に彼はこの世を去り、トルコの歴史に名を刻むこととなります。

評価

彼の外交的な才能や政治力は、インドのネルーによっても高く評価され、イスメト・イノニュの名は現在でもトルコの歴史において重要な位置を占めています。彼は交渉の達人として知られ、国際的な問題に対しても感情的にならず、常に冷静に対処をする姿勢が評価されました。

表彰

彼はその職業を通じて多くの勲章や表彰を受けており、オスマン帝国の銀戦功メダルから、トルコ共和国の赤緑帯付独立勲章まで、軍人としての功績がいかに大きかったかを示しています。彼の人生と業績は、今もなおトルコの人々にとって重要な教訓となっているのです。

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