共和人民党

共和人民党（CHP）とは

共和人民党（Cumhuriyet Halk Partisi、CHP）は、トルコ共和国の主要な政党の一つです。1923年にムスタファ・ケマル・アタテュルクによって設立され、トルコの政治史において重要な役割を果たしてきました。現在の党首は2023年に就任したオズギュル・オゼルです。

設立と一党支配時代

1923年9月9日、ムスタファ・ケマル（後のアタテュルク）により人民党（Halk Fırkası）として設立されました。これは、トルコ革命における抵抗運動の基盤組織「アナトリア・ルメリア権利擁護委員会」の後継組織としての位置づけでした。しかし実際には、1921年にケマルの与党として設立された「権利擁護グループ」が直接的な起源です。1923年の選挙で勝利した権利擁護グループが政党として組織されたのが人民党の始まりです。

1924年には共和制を政党名に冠し、共和人民党（Cumhuriyet Halk Fırkası）に改称。1935年には言語改革に伴い現在の党名となりました。初期には、党内の反主流派が離党し進歩主義者共和党を結成する動きもありましたが、すぐに閉鎖に追い込まれ、共和人民党は議会における一党支配を確立しました。1930年には、体制内野党として自由共和党の創立が試みられましたが、共和人民党を脅かす可能性からすぐに解党されています。

多党制への移行と民主党政権期

1938年にアタテュルクが死去した後も、共和人民党はイスメト・イノニュを終身党首に選び、一党支配体制を継続しました。しかし、第二次世界大戦後の社会情勢の変化から多党制の導入が決定されます。1946年には、アドナン・メンデレスら党執行部を批判した議員が除名され、彼らが民主党を結成。この結果、1950年の総選挙で共和人民党は大敗し、野党に転落しました。民主党政権下で、共和人民党は1954年の総選挙でわずか31議席しか獲得できない惨敗を喫しました。

左旋回と解党

1960年のクーデターで民主党が解散した後、1961年の総選挙では共和人民党が第一党になりましたが、政権運営は困難を極めました。その後、共和人民党は1965年に中道左派路線へと転換しましたが、同年実施の総選挙で公正党に敗れ、再び野党に転落します。1966年には、ビュレント・エジェヴィトが書記長に就任し、さらに左旋回の方針を打ち出しました。しかし、党内の路線対立が深まり、1972年にはイノニュが終身党首を辞任し、エジェヴィトが後を継ぎました。

1973年の総選挙では共和人民党が第一党となり、エジェヴィトは連立政権を樹立しました。しかし、1970年代後半には経済危機と左右対立から社会と政治の情勢が混沌とし、1980年9月12日に軍部によるクーデターが発生し、全政党が解散させられ、共和人民党も解党を余儀なくされました。

共和人民党の復活

1983年に政党活動が解禁されると、共和人民党の伝統的ケマリズム路線の系統に近いグループによって人民主義党が結党されました。また、1984年には中道左派路線の系統のグループから社会民主党が結成され、1985年に両党は合同し社会民主人民党となりました。1992年には共和人民党が復活し、社会民主人民党を離党したデニズ・バイカルを党首として活動を再開しました。1993年には共和人民党と社会民主人民党が合併し、党勢を回復しました。

しかし、1995年の総選挙では苦戦を強いられ、1999年の総選挙では議席を全て失いました。2002年の総選挙では議席を大幅に回復し、議会第二党に返り咲きました。2007年の総選挙では、与党公正発展党との間で世俗主義をめぐる対立が鮮明になりました。2010年には、バイカル党首がスキャンダルにより辞任し、ケマル・クルチダルオールが後任となりました。2011年の総選挙では議席を増やし、現在に至ります。

綱領と党旗・党章

共和人民党の綱領は、アタテュルク時代の1927年の党大会で採択された「6本の矢」と呼ばれる6大原則に基づいています。

1. 共和主義（Cumhuriyetçilik）：共和制の確立を目指す。
2. 国民主義（Milliyetçilik）：トルコ民族による国民国家の確立を目指す。
3. 人民主義（Halkçılık）：社会の諸階層の団結を目指す。
4. 国家資本主義（Devletçilik）：民族資本による国民経済の確立を目指す。
5. 世俗主義（Laiklik）：宗教の政治からの分離を目指す。
6. 革命主義（İnkilâpçılık）

これらの原則は、1937年には憲法にも加えられ、一党独裁期の政権と政策を支えました。現在でも、共和人民党はケマリズムの原則として尊重し、特に共和主義、国民主義、人民主義、世俗主義の4原則を重視しています。

党旗と党章は、「6本の矢」に基づいてデザインされており、赤地に6本の白い矢印が左下から伸びるデザインとなっています。

現在の共和人民党

現在の共和人民党は、中道左派の政党として、与党公正発展党と対立しています。特に世俗主義の分野で、両党の対立は顕著です。社会主義インターナショナルにも加盟しており、イギリス労働党やドイツ社会民主党など、他国の中道左派政党との連携も重視しています。

共和人民党は、トルコ政治において、長い歴史と伝統を持つ重要な政党であり、その動向はトルコの政治情勢を大きく左右します。

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