イスラエル旅券

イスラエル旅券の詳細解説

イスラエル旅券（ヘブライ語: דַּרְכּוֹן יִשְׂרָאֵלִי, Darkon Yisre'eli）は、イスラエル国民が国外へ旅行する際に必要となる公式な渡航文書です。このパスポートを持つことで、海外にいるイスラエル国民は現地のイスラエル領事館から保護を受ける権利が与えられます。イスラエル国民は他国のパスポートを所持することも可能ですが、2002年の規制により、イスラエルへの出入国には必ずイスラエル発行のパスポートを使用することが義務付けられています。

歴史

イスラエルは1948年5月14日の独立宣言後、間もなく旅券の発行を開始しました。初期の旅券は、有効期間が2年間で、シンプルな渡航文書としての役割を果たしていました。当時の旅券には、ヘブライ語とフランス語が併記されていました。1952年には、イスラエル国籍法がクネセト（イスラエル議会）で可決され、それを受けてイスラエルは正式に「パスポート」と呼ばれる渡航文書を発行するようになりました。最初のパスポートは、後に首相となるゴルダ・メイアに発行されました。

初期のイスラエル旅券には、「ドイツを除くすべての国に有効」という制限がありました。ドイツへの渡航を希望するイスラエル国民は、この制限を解除するために申請を行い、パスポートから「ドイツを除く」という文言を取り消す必要がありました。しかし、1952年にドイツとの賠償協定が締結されたことで、この制限は撤廃されました。

1980年3月30日以降に発行されたパスポートでは、フランス語の代わりに英語が使用されるようになりました。さらに、2006年からは、パスポートが選挙時の身分証明書としても利用可能になりました。

2013年以降、米国や欧州連合などの国際基準に準拠したバイオメトリック（生体認証）パスポートが導入されました。生体認証パスポートを取得するためには、申請者は内務省のオフィスで顔写真の撮影と指紋の採取を受ける必要があります。この際、顔の骨格や目の間隔、耳と目の距離などの情報が特殊なカメラで記録され、指紋データと共に新しい電子パスポートに格納されます。

デザインと特徴

イスラエルのパスポートは紺色で、表紙の中央にはイスラエルの国章が配置されています。その下には、ヘブライ語で「מדינת ישראל」、英語で「STATE OF ISRAEL」と国名が記されています。国章の下には、「מדרכון」（ヘブライ語）と「PASSPORT」（英語）という文字が刻まれています。パスポートの内側のページには、オリーブの枝と七枝のメノーラー（燭台）をモチーフにした国章が描かれています。一般的なパスポートは32ページで構成され、ビジネス用途のパスポートは64ページです。

イスラエルのパスポートは18歳以上の国民に対して最長10年間有効です。パスポートにはヘブライ語と英語が使用されており、ヘブライ語は右から左に書かれるため、パスポートも右端から開き、ページは右から左へ進むレイアウトになっています。イスラエルのパスポートにはアラビア語は使用されていませんが、内部のIDカードにはアラビア語が記載されており、これは国家機関での使用が法律で定められた「国家における特別な地位」に分類されています。

ID情報ページ

イスラエルのパスポートの個人情報ページは2ページ目に記載されており、以下の情報が含まれています。

パスポート保持者の顔写真
タイプ（P/ד）
国コード（ISR）
パスポート番号
イスラエルID番号
苗字
名前
国籍
生年月日
性別
出生地
発行日
有効期限
発行機関
* 署名欄（バイオメトリックパスポートの場合）

これらの情報はすべて、ヘブライ語と英語で併記されています。情報ページの最後には、機械可読領域があります。非バイオメトリックパスポートの場合、署名欄は3ページ目にあります。

渡航文書

イスラエルは、パスポートを所持していない人に対して、入国および出国を許可するための渡航文書（ヘブライ語: תעודת מעבר teudat ma'avar）を発行する場合があります。しかし、この渡航文書は多くの国で旅行や身分証明書として認められていないため、所有者は通常のイスラエルパスポートを持つ人と比べてビザなし入国が許可される国が限られています。また、渡航文書を利用してイスラエルを出国しても、他の国への入国やイスラエルへの再入国が保証されるわけではありません。

ビザと制限

イスラエルへの入国にはビザが必要な場合があります。国籍によってビザの要件は異なりますので、渡航前に必ず確認する必要があります。

また、イスラエルには特定の国への渡航制限があります。1954年のイスラエル侵入防止法に基づき、レバノン、シリア、イラク、サウジアラビア、イエメンなどの国々は「敵国」に指定され、これらの国々への渡航にはイスラエル内務省の許可が必要です。ただし、エジプトとヨルダンは1978年と1994年の和平協定締結後にリストから削除されました。イランは1979年のイラン革命後にリストに追加されました。2020年1月には、イスラエル内務大臣がイスラム教徒とユダヤ教徒のイスラエル国民が宗教的およびビジネス目的でサウジアラビアに渡航できると発表しました。

イスラエルを国家として承認していない国々（アルジェリア、バングラデシュ、ブルネイ、イラン、イラク、クウェート、レバノン、リビア、マレーシア、パキスタン、サウジアラビア、シリア、イエメン）は、イスラエルのパスポート保持者に対して異なる程度の制限を課しています。特にイラン、クウェート、レバノン、リビア、シリア、イエメンの6カ国は、イスラエルのビザまたはイスラエルへの渡航歴がある人の入国を許可していません。

まとめ

イスラエル旅券は、イスラエル国民にとって重要な渡航文書であり、その歴史やデザイン、機能には様々な特徴があります。渡航の際には、ビザや渡航制限に関する情報を事前に確認し、安全で円滑な旅を実現することが重要です。

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