渡航文書

渡航文書について

渡航文書とは、政府や国際機関によって発行される、個人または小規模な団体が国境を超える際に必要な身分証明書のことを指します。これらの文書は、発給国が所持者の帰国を保証し、また外国政府が査証や出入国記録を付与するために発行されることが一般的です。一般的な形式は冊子状で、最もよく知られているのはパスポートです。このパスポートを持つ者は、特定の国への入国時にビザの免除といった特典を受けることができることが多いです。ただし、渡航文書という言葉は、場合によっては難民旅行証明書のように国籍を証明するものに限られることもあります。

パスポート

パスポートは、発給国の国籍証明として重要な役割を果たします。多くの国ではパスポートを受け入れていますが、いくつかの国は認可されていない政府が発行したパスポートを無効とすることもあります。これにより、国によっては特定の条件や制限が存在することに留意が必要です。

レセパセと緊急パスポート

レセパセは、政府や国際機関（国連や国際赤十字など）が発行する特別な渡航文書です。通常は人道的な理由によって発行され、発給国からの片道での旅行が可能となります。また、一部の国では国民に対し緊急パスポートの代わりにレセパセを発行することもあります。レセパセは歴史的に見ても戦時や平時を問わず使用され、公務員や外交官など国家を代表する者々に渡航許可を与えるために利用されました。

例えば、1950年代にはイラク政府がユダヤ人住民に対して国籍と資産の放棄を条件に出国を許可し、その際にはパスポートの発行ができなかったためレセパセが提供されました。

国際連合渡航文書

国際連合やその関連機関は、職員やその家族のためにレセパセを発給しています。国連が発行するこの文書は、ほとんどの国がその効力を認めており、時には特定の外交的特権が認められる場合もあります。ただし、国によっては入国のための十分な文書とされないこともあります。1990年代から2000年代初頭には、国際連合コソボ暫定行政ミッション（UNMIK）がコソボ住民に「UNMIK渡航文書」を発行し、パスポートが入手できない住民に対する優遇策として機能しました。

その他の渡航文書

特定の目的で発行された他の文書も、限られた国々で渡航文書として認識されることがあります。例えば、欧州連合内での身分証明書やアメリカのパスポートカード、特定州における強化運転免許証などです。日本の場合、在外公館は日本国籍のある者に対し、帰国のための片道の渡航書を発行します。この文書は特定の条件下でのみ有効です。

香港では、香港人に対してHKSAR旅券の発行が行われており、イギリス政府もBN(O)旅券を提供していますが、これらの文書は中国本土への旅行には利用できません。そのため、香港の住民は「港澳居民来往内地通行証」という特別な渡航文書を取得しなければなりません。さらに、国際刑事警察機構（インターポール）では、犯行捜査の円滑化を図るために特定の渡航文書も発行しています。

このように、渡航文書は国によってその発行方式や効力が異なるため、渡航を希望する場合は事前に確認が重要です。

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