イタリアにおける闘争

イタリアにおける闘争：革命と社会矛盾を描いた実験映画

1969年、ジャン＝リュック・ゴダールとジャン＝ピエール・ゴランを中心とする「ジガ・ヴェルトフ集団」によって製作された『イタリアにおける闘争』(Lotte in Italia)は、約1時間の長編映画です。パリで撮影された本作は、イタリア放送協会（RAI）への納品を依頼されましたが、完成後に拒否されるという異例の経緯を辿りました。

映画は大きく4部構成で、マルクス主義者の女子大生パオラ・タヴィアーニ（クリスチャーナ・トゥリオ・アルタン）の物語を中心に展開します。第1部はパオラの革命運動への参加の様子を描写。第2部では、パオラが自身の状況を分析し、「私」という存在の社会的矛盾を自覚していく過程が描かれています。第3部は、第1部と第2部の内容を検証するような構成で、第4部ではパオラがテレビに出演し、自身の経験について語る場面が映し出されます。

この作品における重要な要素として、パオラ役のクリスチャーナ・トゥリオ・アルタンの存在があります。彼女はジガ・ヴェルトフ集団と深く関わり、『東風』や『万事快調』といった作品にも出演しました。集団解散後は編集助手に転身し、その後は編集技師としてキャリアを積むことになります。彼女の経歴は、この映画が持つ社会的な文脈を理解する上で重要な手がかりとなります。

他の主要キャストにも注目すべき点があります。パオラの父親や警官の声を担当したパオロ・ポゼッシは、ゴダール作品への出演経験を持ち、その後はイタリア放送協会でテレビ映画の脚本を執筆しています。また、若者役を演じたジェローム・アンスタンは、後に録音技師に転向しています。これらのキャストの経歴は、60年代後半から70年代初頭にかけての映画界の状況や、社会運動と映画製作の関係を示唆しています。

『イタリアにおける闘争』は、単なる物語映画ではなく、社会政治的なメッセージを強く打ち出した実験映画です。アバンギャルドな映像表現と、当時の社会運動、特にマルクス主義的な思想が強く反映された作品であると言えます。 イタリア放送協会が納品を拒否した背景にも、この映画が持つ社会批判的な内容が関係していると考えられます。

本作は、ジガ・ヴェルトフ集団の活動を知る上で非常に重要な作品です。彼らの実験的な映画製作手法や、社会に対する強いメッセージ性を理解する上で、欠かせない1本と言えるでしょう。監督・脚本・撮影・編集はジガ・ヴェルトフ集団名義となっており、集団の共同作業による作品であることを示しています。また、16ミリフィルムによるイーストマンカラーの作品であることも、その実験的な手法の一端を垣間見ることができます。

現在では、allcinema、KINENOTE、IMDbなどを通じて、この作品に関する情報を閲覧することができます。これらのデータベースは、この実験映画の歴史的・文化的意義を改めて認識する上で役立つでしょう。ゴダール監督作品を理解する上でも重要な位置づけにある作品として、ぜひ一度鑑賞することをお勧めします。

もう一度検索