イタリア式庭園

イタリア式庭園：ルネサンス期の美と調和

イタリア式庭園は、14世紀から16世紀にかけてイタリアで発展した西洋庭園様式の一つです。幾何学的なデザインと、建物を中心とした左右対称の構成が特徴で、テラス式庭園や露壇式庭園とも呼ばれています。丘の中腹などに造られ、周囲の風景と調和した設計、パノラマビューを楽しめる点が大きな魅力です。

庭園の特徴

イタリア式庭園は、以下の特徴を備えています。

幾何学的な構成: 庭園全体が幾何学的な図形で区画され、明確な軸線（ビスタ）によって左右対称に設計されています。
テラスと段状の構成: 丘陵地などに造られることが多く、複数のテラスが段状に配置され、高低差を利用した変化に富んだ景観が創出されます。
中心軸: 庭園の中央には、建物や噴水など重要な視覚的要素が配置され、そこから左右対称に構成が展開します。
人工物との調和: 噴水、カスケード（階段状の滝）、彫刻、人工洞窟（グロット）などの様々な人工物が配置され、自然と人工物の調和が追求されています。
パノラマビュー: 庭園からは周囲の風景を一望できるよう設計されており、遠くまで広がるパノラマ景観が楽しめます。
隠れ家のような空間: ジャルディーノ・セグレト（隠れ庭）と呼ばれる、プライバシーを確保した隠れた空間が設けられることもあります。
ベルベデーレ: 美しい眺めを堪能できる展望台や、高台に作られたテラスを指します。
ボスコ: 樹林や、規則正しく植えられた列植などが用いられます。
ノットガーデン: 幾何学模様に刈り込まれた生垣で装飾された花壇です。
立体迷路: 生垣などで造られた迷路が、庭園の遊び心を演出します。

イタリア式庭園の起源と発展

イタリア式庭園は、ルネサンス期にイタリア郊外の別荘（ヴィラ）で盛んに造られるようになりました。特に、ルネサンス期の建築家や思想家たちの影響が大きく、アルベルティの庭園論や別荘生活論が庭園デザインに大きな影響を与えました。

アルベルティは、『建築論』の中で、別荘の敷地選定や庭園の設計について詳細に論じています。彼は、別荘は都市生活から離れ、自然と調和した健康的な生活を送るための場所であると主張し、周囲の風景と調和した庭園デザインの重要性を説いています。

イタリア式庭園の代表例

フィエーゾレのメディチ・ヴィラ: イタリア最古のルネサンス様式庭園の一つ。フィレンツェの景色を一望できる丘の中腹に位置し、アルベルティの思想を反映した設計が特徴です。
ローマ・バチカン宮殿のベルヴェデーレ宮殿: ブラマンテによって設計された庭園。古典彫刻のコレクションを配し、比例、対称性、遠近法を重視した設計となっています。
ローマのヴィラ・マダマ: ラファエロが設計に関わったとされる庭園。円形の中庭や、ローマの景色を一望できるテラスが特徴です。
トスカーナのヴィラ・ディ・カステッロ: コジモ1世・デ・メディチの命によって造られた庭園。噴水、迷路、人工洞窟など、多様な要素が盛り込まれています。
チボリのヴィラ・デステ: イタリアルネッサンス様式の庭園の中でも最も壮大で保存状態の良いものの1つ。複雑な噴水システムと、神話にちなんだ彫刻が特徴です。
ヴィラ・デッラトッレ: マニエリスム様式の庭園。古典的なルールを意図的に破った、遊び心のあるデザインが特徴です。
* サクロ・ボスコ: マニエリスム庭園の代表例。巨大な彫刻や迷路のような道が特徴で、ルネサンス庭園の規範とは対照的なデザインとなっています。

日本におけるイタリア式庭園

日本にも、イタリア式庭園を模した庭園が数多く存在します。須磨離宮公園、淡路夢舞台「百段苑」、山手イタリア山庭園などがその代表例です。これらの庭園は、日本の自然環境に合わせた独自の解釈を加えつつ、イタリア式庭園の特徴を巧みに取り入れています。

イタリア式庭園の影響

イタリア式庭園は、16世紀以降ヨーロッパ中に広がり、フランス式庭園をはじめとする様々な庭園様式に大きな影響を与えました。その幾何学的な構成や、自然と人工物の調和といった要素は、現代の庭園デザインにも受け継がれています。

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