イチイガシ

イチイガシ（Quercus gilva）

イチイガシは、ブナ科に属する常緑高木で、主に日本の本州の南部、四国、九州に広く分布しています。樹高は最大30メートルに達することもあり、特徴的な暗灰色の樹皮は不規則に剥がれることで知られています。葉は倒披針形で、ザラザラとした触感を持ち、特に裏面に密生する星状毛が見られます。春には雌雄同株の花を咲かせ、秋には食用となる堅果（どんぐり）が熟します。

生態と共生関係

イチイガシは、他のブナ科の樹木同様、菌類と根が共生して菌根を形成します。この菌根は、樹木が有機酸や抗生物質を通じて土壌から栄養を吸収する手助けをし、逆に樹木は光合成によって得たエネルギーを菌類に供給します。この相利共生の関係によって、イチイガシは成長を促進されます。特に、菌根の影響を受けて成長が変化し、たとえばアカマツ苗木に感染した場合、地下部の成長が促進される一方、地上部の成長が抑制されることもあります。

花は風によって授粉され、果実は重力により散布されます。イチイガシのドングリは、ツキノワグマやイノシシなどに食べられ、その唾液中の成分がタンニンを中和します。ネズミの貯食行動もイチイガシの種子発芽に寄与し、また、撃退作用があると言われるタンニンが、ネズミの発育に影響を与えることが示されています。イチイガシは、虫害の影響を受けることもありますが、実生が生き残ることもあり、その後の生育に影響されることが多いとされています。

木材とその利用

イチイガシの木材は非常に硬く、重いため、古くから木材利用の対象とされてきました。気乾比重が平均0.9程度で、成長の良い木材はさらに硬く重くなります。この木材は、建築材、器具材として使用されるほか、薪や木炭としても評価されています。特に宮崎県では、イチイガシを用いた炭が「美郷町備長炭製炭技術保存会」として評価されています。

食用としての利用

イチイガシの果実は、あく抜きせずに食べられるため、縄文時代から人々によって利用されてきました。佐賀県の遺跡からも、イチイガシの発掘例が見つかっており、食文化の一端を担っていることがわかります。

保全状況と天然記念物

日本国内では、大村のイチイガシ天然林をはじめ、県や市町村指定の天然記念物として保護されています。イチイガシは個体数が比較的多い場所もありますが、特定の地域では絶滅が危惧されています。そのため、保護活動が行われています。

結論

イチイガシは、独特の生態系の一部を形成し、木材や食用資源としての価値も高い樹木です。その生態や利用についての理解が深化することで、持続的な保全活動が期待されます。今後もイチイガシの研究や保護活動が重要な役割を果たすことでしょう。

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