イトヨリダイ

イトヨリダイ（糸撚鯛）

イトヨリダイ（学名：Nemipterus virgatus）は、イトヨリダイ科に属する海水魚で、主に西太平洋の砂泥底に棲息します。この魚は漁業において重要な対象であり、特にその味わいが高く評価されています。

分類と名称

1782年、オランダの博物学者マールテン・ホッタインによって初めて記載され、当初はSparus virgatusという名で呼ばれていましたが、後にタイ目に分類されることとなりました。種小名の「virgatus」は、「縞模様」を示しており、体側に見られる鮮やかな黄色の縦縞に由来しています。「イトヨリ」という和名は、魚が糸のようにしなやかな動きで泳ぐ様子から名付けられています。なお、地域によっては「イトヒキ」と呼ばれることもあります。

分布と生息地

イトヨリダイは日本の南部から東シナ海、ベトナム、台湾海峡、フィリピン、オーストラリア北西部、アラフラ海に至るまで、広範囲に分布しています。日本国内では新潟県以南の日本海岸、鹿島灘以南の太平洋岸、瀬戸内海で見ることができます。底に生息する魚であり、主に水深40-220mの砂泥底に存在し、幼魚は18-33mの浅い場所にいることが多いです。特に東シナ海では春から夏にかけては大陸棚の浅い地域にとどまり、冬になると沖合に移動します。

形態

イトヨリダイの背鰭は10棘と9軟条、臀鰭は3棘と8軟条から成り、全体的に流線型の体形を持つことが特徴です。体長に対し体高は3.2〜4倍あり、吻部は眼の直径よりも長いです。上顎の前部には3〜4対の犬歯があり、胸鰭と腹鰭は長いのが特徴です。体の上半分はピンク色で徐々に淡くなり、側面には6本の縦縞があります。頭部はピンクで、目元には黄色の縞があります。”

生態

イトヨリダイは雌雄同体の魚で、雄は機能する精巣を持ちながらも卵巣は未発達な状態です。主な産卵時期は2月から6月で、特に2月から4月頃にピークを迎えます。主に小魚や甲殻類、頭足類を捕食し、成長すると約2〜3年で成熟することが確認されています。また、日本の駿河湾では主に1〜6月に繁殖し、5〜8月頃には稚魚が見られます。

人との関わり

イトヨリダイは東シナ海や南シナ海において商業漁業の重要なターゲットとされており、様々な漁法で捕獲されています。しかし、近年漁獲量は減少しており、IUCNのレッドリストで危急種として登録されています。

日本における位置付け

日本では高い経済的価値を持つ白身魚であり、特に関西地方では珍重されます。季節としては主に秋から冬にかけてが最も美味とされていますが、輸入品も多く流通しているため、鮮度に注意が必要です。その身は柔らかく崩れやすいため、調理法としては蒸し魚や塩焼きが主で、場合によっては刺身としても楽しまれます。

台湾での利用

台湾では「金線鰱」という名前で親しまれており、一般的に油で焼くことが多いですが、特有の風味付けを楽しむこともあります。

中国大陸での食文化

香港や広東省では「紅衫」として知られ、油で焼く調理法が一般的で、地域によっては様々な味付けが施されます。

関連情報

イトヨリダイは日本国内において、美味しい魚としてその地位を確立しており、さまざまな調理法で楽しまれています。今後も持続可能な漁業と保全が求められる魚種です。

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