イドミミズハゼ

イドミミズハゼ（井戸蚯蚓鯊）

イドミミズハゼ（Luciogobius pallidus）は、ハゼ科ミミズハゼ属に分類される魚類の一種です。和名の由来は、最初に発見された場所が井戸であったことに由来します。その独特な生態と生息環境から、注目を集めています。

分布

イドミミズハゼは、日本国内では本州、四国、九州に広く分布しています。具体的には、新潟県、富山県、石川県、福井県、京都府、兵庫県、鳥取県、島根県、山口県、広島県、岡山県、和歌山県、三重県、愛知県、静岡県、徳島県、高知県、愛媛県などで確認されています。また、佐渡島、五島列島、奄美大島などの離島や、国外では済州島にも生息しています。

主な生息場所は、河口域の転石の下などの伏流水や地下水中です。岸辺から真水が染み出すような場所や、干潮時に完全に水が引いてしまうような場所でも見られることがあります。これは、イドミミズハゼが地下水脈と密接に関わって生活していることを示しています。

形態

全長は6cmから8cm程度で、細長いミミズのような体形が特徴です。頭部は小さく、縦方向に扁平しています。眼は非常に小さいか、退化して消失している個体もいます。これは、地下水中で光がほとんどない環境に適応した結果と考えられています。

背鰭は1つで、基底部が短いです。肛門は、臀鰭の基部のすぐ手前に位置しています。体表は粘液で覆われており、ぬるぬるしています。鱗は存在しません。脊椎骨数は34から37個、胸鰭の条数は13から15本です。体色は、くすんだ柿色から桃色をしています。

生態

イドミミズハゼは、秋から早春にかけて繁殖期を迎えます。食性は肉食性で、主に小型の甲殻類を捕食します。普段は、礫の下に体をくねらせて隠れて生活しています。地下水中でひっそりと生きる様子は、他の魚類とは大きく異なっています。

保全状況

近年、地下水系や伏流水の減少により、イドミミズハゼの生息数は減少傾向にあります。そのため、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧（NT）に指定されており、絶滅の危機に瀕しています。生息地の保全や、地下水環境の保護が急務となっています。

まとめ

イドミミズハゼは、その特異な形態と生態、そして貴重な生息環境を持つ魚類です。しかし、環境破壊により、その存在が脅かされています。私たち一人ひとりが、地下水環境の保全に関心を持ち、持続可能な社会の実現に向けて努力することが、イドミミズハゼの未来を守ることに繋がります。

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