イニゴ家

イニゴ家：パンプローナ王国最初の王家

イニゴ家（Dinastía Íñiga）は、パンプローナ王国（後のナバラ王国）において、最初に支配権を握ったと考えられている王家です。しかし、記録資料が乏しいため、その起源には不明な点が多く、伝説的な要素も含まれています。

起源と勢力拡大

イスラム勢力がナバラにまで拡大した時代、パンプローナ王国では、カロリング朝の保護を受け入れるか、コルドバのアミールとの合意を尊重するかの2つの派閥が形成されました。イニゴ家は後者の立場を取り、エブロ川中流域を支配していたムラディの一族、バヌ・カシ家と同盟を結び、勢力を拡大しました。

イニゴ・アリスタは、イニゴ家の祖であり、初代のパンプローナ王とされています。アンダルシアの年代記によれば、彼はイニゴの息子であるとされています。当時の記録は少ないものの、パンプローナが政治的な発展の中心地として位置づけられていたことが伺えます。イニゴ・アリスタの死後、息子のガルシア・イニゲスが王位を継承し、アストゥリアス王国やアラゴン伯との和平と同盟を結びました。しかし、バヌ・カシ家との関係も維持しており、キリスト教国の枠組みに完全に収まることはありませんでした。

王朝の交代

ガルシア・イニゲスの後を継いだフォルトゥン・ガルセスは、バヌ・カシ家からの軍事的圧力に苦しみ、王国の安定を維持することが困難となりました。905年、フォルトゥン・ガルセスは王位を放棄し、イニゴ家と密接な関係にあったヒメノ家のサンチョ・ガルセスが王位に就きました。この王朝交代が武力によって行われたのか、あるいはイスラム勢力から領土を守るために、より軍事的に優位な貴族に王位が自発的に譲渡されたのかは定かではありません。

ヒメノ家による統治

ヒメノ家が王位に就いたことは、アストゥリアス王国とパリャース伯領に受け入れられ、バヌ・カシ家からの離脱が期待されました。サンチョ1世の即位以降、ムスリムやバヌ・カシ家との戦いのため、アストゥリアス王やレオン王との協調政策が取られました。

イニゴ家からヒメノ家への王朝交代は、パンプローナ王国（ナバラ王国）の歴史における重要な転換点となりました。その後、ナバラ王国は、より明確なキリスト教国家としての性格を強め、イベリア半島の政治地図において重要な役割を果たすことになります。

まとめ

イニゴ家は、パンプローナ王国（ナバラ王国）の基礎を築いた王家として、その後の歴史に大きな影響を与えました。イスラム勢力との関係や、周辺のキリスト教国との同盟など、複雑な状況の中で勢力を拡大し、王国を発展させました。しかし、バヌ・カシ家との関係や、後継者問題など、課題も多く抱えており、最終的にはヒメノ家に王位を譲ることとなりました。

参考文献

レイチェル・バード、狩野美智子 訳 『ナバラ王国の歴史』 彩流社、1995年
西川和子 『スペイン中世烈女物語』 彩流社、2019年

関連項目

* ナバラ君主一覧

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