イニシエーション・ラブ

『イニシエーション・ラブ』

概要

『イニシエーション・ラブ』は、日本の著者、乾くるみによる小説で、特にタロットカードの「恋人」をテーマにしたタロウ・シリーズの一作として知られています。この作品は、1980年代後半に旧静岡市を舞台にした恋愛物語であると同時に、巧妙に配置されたどんでん返しによりミステリー的な要素も含んでいます。1986年から1987年にかけての日本の世相や流行を反映した描写が特色で、読者の心に深い印象を与えています。

本作は第58回日本推理作家協会賞にも候補となり、2005年版の本格ミステリ・ベスト10では第6位にランクインしました。また、2014年3月3日に放送された『しゃべくり007』で有田哲平がこの小説を「最高傑作のミステリー」と絶賛し、その影響で急速に売上が伸びました。2015年の時点では、売上は130万部を超えており、日本の文学作品の中でも特に人気を博しています。

あらすじ

物語は二つの視点、すなわちside-Aとside-Bから構成されています。

side-A

鈴木は友人の紹介で参加した合コンで成岡繭子（マユ）と出会い、彼女に惹かれますが、自然な会話ができずに悩みます。再び会った海水浴で意を決して連絡先を交換し、二人は徐々に親密になっていきます。デートを重ねるうちに、互いの愛情を深め、ついには結ばれることに。しかし、鈴木は友人との関わりの中で嫉妬や不安を抱き、その感情が二人の関係を試すことになっていきます。二人の関係が深まるクリスマスイブ、幸福感に浸る鈴木でしたが、物語は彼が選ぶべき道を暗示するシーンで終わります。

side-B

鈴木は就職を地元の企業に決めますが、東京の親会社に派遣されることに。遠距離恋愛に突入する鈴木とマユは、最初は意気込んで守り合おうとしますが、鈴木は仕事や経済的な負担を抱え、精神的な疲労が続きます。その中で彼は東京で同僚の美弥子と情を深め、最初の愛、マユとの関係が揺らぎ始めます。鈴木は次第に心と身体の負担から逃げられず、最終的には二股状態に陥ります。最終章では、鈴木が間違ってマユの名前を美弥子で呼んでしまい、関係の破綻が訪れます。

登場人物

• - 鈴木：静岡大学の学生で22歳。恋愛に奥手だが、繭子と恋に落ちる。
• - マユ（成岡繭子）：22歳で短髪の歯科衛生士。鈴木の恋人。
• - 北原：鈴木の友人。合コンメンバー。
• - 美弥子：鈴木の職場の同僚で、新たな恋愛の対象。

評価と書誌情報

本作は持ち歌のように懐かしい1980年代の楽曲が豊富に散りばめられた作品であり、特に映画化された際には多くのファンの心を掴みました。映画は2015年に公開され、主演は松田翔太が務めました。原作小説も再版され続け、多くの読者に愛される作品となっています。

この作品は、愛と裏切り、そして人の成長を描くことによって、単なる恋愛小説とは一線を画す存在となっています。

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